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CCI 2009年3月号
  【第2回】『住宅瑕疵担保履行法が分離発注に適用されると?』

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『CM分離発注の実践現場から』
 〜建築士へのレポート/各地の事例を徹底取材〜

【第2回】
『住宅瑕疵担保履行法が分離発注に適用されると?』

取材・記事 山中省吾・武藤昌一・藤井旭

雑誌『イエヒト』編集部・特別取材班

■保険加入義務に該当する業者は、それぞれが保険に加入しなければならないのか?

■1つの業者が代表して保険に加入するのか?

■保険掛け金は、請負った範囲に相当する金額か?

■加入義務に該当しない業者の瑕疵が発生したら?

■業者に履行法の認識が無く、保険に加入せずに住宅を完成させた場合は?

「住宅瑕疵担保履行法」がCM分離発注方式に適用されるとどうなるか?」について、国交省と指定保険法人の取材を基に解説する。


分離発注も履行法の対象となるか?

「住宅瑕疵担保履行法」(以下、履行法)の背景と目的を明らかにするため、イエヒト編集部は昨年の4月と5月に国交省を取材した。その時、「履行法は分離発注の建物も対象となるか?」という質問を投げかけた。

回答はすぐには得られなかった。幾度か催促したが、「検討中」という返事ばかり。ようやく9月になってから回答があった。それは「分離発注の建物も対象となる」というものだった。

国交省の回答を得た後、イエヒト編集部は直ちに指定保険法人を取材した。履行法が分離発注の建物に適用されると、どの業者がどのように保険をかけるのか?

指定保険法人では、分離発注に適用する際の大枠の方針はほぼ定まっていたが、これまでに行われた個々の分離発注事例に置き換えると、原則論では見えなかった新たな問題も見えてきた。

しかも、それぞれの保険法人の解釈は微妙に違い、時が経つと変化した。未だに解釈が揺れ動いている、というのが現状である。

さて、これらのことを解説するにあたり、はじめに履行法の背景、目的、主な内容について要点を示す。その方が読者の理解がより進むと思われるからである。



背景は耐震偽装事件で
目的は住宅取得者の救済


履行法の背景と目的について、国交省を取材した時の回答は概ね以下であった。

履行法をつくった背景には、耐震偽装事件がある。危険なマンションの取得者は、建物を解体するとローンだけが残り、建て替えると2重のローンに苦しんだ。そして責任を負うべき業者が倒産すると、品確法で定めた10年間の瑕疵保証義務は何の効力も持たなかった。

そこで、何らかの形で業者の資力を確保し、品確法の瑕疵担保責任に実効性を持たせる必要が生じた。

以上が履行法の背景である。したがって目的は、住宅の取得者を守るため、ということになろうか。対象となる建物も、新築住宅に限定され、戸建て住宅、共同住宅を問わない。また、分譲住宅、賃貸住宅も問わない。



「業者」とは?
「瑕疵」とは?


その履行法が、いよいよ本年10月1日以降の引き渡し物件から施行される。業者は供託金を預けるか保険に加入して、瑕疵が発生したらそれを原資に住宅取得者を救済するのであるが、おそらく供託金を積む業者は少数で、大部分の業者が保険に加入する方法を選択すると思われる。したがって、ここでは保険加入のケースについてのみ記す。

さて、法律の対象となる「業者」とは、住宅を請負った建設業者、あるいは住宅を販売した宅建業者であるが、建築士を読者対象としたこの記事では建設業者に絞って解説する。

また、対象となる「瑕疵」とは、主要な構造部と雨水の侵入防止に関する瑕疵である。つまり、それ以外の瑕疵は履行法の対象としていない。

建設業者はあらかじめ国土交通省が認可した指定保険法人(現在5社)に登録し、着工前に保険の加入を申し込まなければならない。着工後、保険法人による現場検査が2〜3回行われ、特に問題がなければこれまでと大差なく工事は進むであろう。

概略を示せば、このように簡明である。ところがこの履行法、分離発注方式の建物に適用すると、たちまち複雑で難解なものになる。



保険加入の義務を負う建設業者


履行法では、工事を請負った建設業者が保険加入の義務を負う。一式請負(一括請負)の場合なら、何も考えることはなく、業者は元請け業者に決まっている。下請け業者は関係ない。

では、分離発注方式の場合はどうであろうか? 15〜25の業者と工事請負契約を交わすことが多い分離発注は、元請け業者は1つではなく、契約を交わした数だけ存在する。

では、分離発注の場合、すべての業者に保険加入の義務があるのか? それは否である。以下の2つの条件のどちらにも該当する業者だけが、履行法で定める保険加入の義務を負うことになる。

 @建設業の許可を受けた建設業者

 A主要な構造部と雨水の侵入防止に関係する業者

建築業法第2条、第3条で「建設業の許可」について定めている。具体的に示せば、土木工事業、建築工事業、大工工事業、左官工事業、石工事業など、28の業種がある。

これら建設業の許可を受けた業者の中で、尚且つ主要な構造部と雨水の侵入防止に関係する業者が履行法に該当する。しかし、主要な構造部と雨水の侵入防止に関係する業者は、ケースバイケースで判断しなければならない。

まず「建築工事業」の許可を受けた業者は、一式工事を前提としているので主要な構造部にも雨水の侵入防止にも該当する。「鉄筋工事業」の許可を受けた業者は、主要な構造部に該当するが、雨水の侵入防止には該当しない。

また、こんなケースも考えられる。「左官工事業」の許可を受けた業者であっても、内部の左官工事だけを請け負った場合は雨水の侵入防止に該当しないが、外壁の施工を請け負ったら該当する。

このように、分離発注は個々のケースを見ていくと、かなりややこしいのである。



該当するけど該当しない
建設業の許可を持たない大工


建設業法第3条(建設業の許可)に次のような記載がある。

「軽微な工事のみを請け負うことを営業とする者は、この限りでない」

軽微な工事の内容は、建設業法施行例第1条の2で示している。その中に以下の記載がある。

「工事1件の請負代金の額が工事一式にあっては1,500万円に満たない工事又は延べ面積が150uに満たない木造住宅工事、建築一式工事以外の建築工事にあっては500万円に満たない工事とする」

この条文が履行法を更にややこしくしている。何故なら、建設業の許可を持たない建設業者が多数存在するからだ。

建設業の許可を持たない大工でも、延べ面積が150uに満たない木造住宅を一式で請負うことができ、そのような大工は実際に多く存在する。

しかも、延べ面積が150uに満たない住宅は、大部分の住宅を網羅している。このような建物を軽微な工事と定めているのはさておき、建設業の許可を持てば履行法の対象となり保険加入の義務を生じるが、建設業の許可を持たなければ履行法の対象外となる。

これはどういうことであろうか。履行法の背景と目的に立ち帰るなら、以下のようにも解釈できる。

建設業の許可を持たない大工は、瑕疵を起こさない。したがって、10年の瑕疵を担保するための資力の確保は必要ない。あるいは、建設業の許可を持たない大工は、十分な資力を蓄えているので大丈夫、ということか。



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対象業者が複雑に
組み合わさる分離発注


建設業の許可を持たない業者が多数存在することで履行法を更に複雑にしているが、一式請負の場合はまだ分かりやすい。これが分離発注の場合だと、たちまち複雑で難解になる。

請負契約を交わした業者の中で、どの業者が履行法で定める保険加入の業者に該当するか、念いりに調べなければならないのだ。

これまでに行われた分離発注を例に一覧表で示してみる。

工事請負契約を交わした16業者のうち、建設業の許可を持っているのが6業者、主要構造部に関係あるのが3業者、雨水の侵入防止に関係あるのが4業者あった。その結果、履行法で定める保険加入の義務に該当するのは3業者だった。

実は、ここからが複雑で難解なのである。

保険加入義務に該当する3業者は、それぞれが保険に加入しなければならないのか? あるいは、1つの業者が代表して保険に加入するのか? 保険の掛け金は請負った範囲に相当する金額か? 保険加入義務に該当しない業者の瑕疵が発生したら?

そしてもし、分離発注で工事請負契約を交わした業者に履行法の認識が無く、保険に加入せずに住宅を完成させ建築主に引き渡した場合は?

と、ここまで書いたところで誌面が尽きた。結論と新たな問題点は次号で。しかし、いちど示された指定保険法人の見解もやがて変化していくのであるが……。



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掲載者 イエヒト編集室
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