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リプラン北海道版77号に掲載されました。
宮城県仙台市/(株)本間総合計画
◆西の平の家〜視覚障害をもつ家族に配慮したユニバーサルデザイン〜
失明の恐れもある縁内障の発症率が、40歳以上で20人に1人と高い割合を示していることは、あまり知られていない。自覚症状が無い為、健康診断の機会が少ない主婦に多いという。この西の平の家は、50代前半で縁内障を患われた奥さんが日々を心安く過ごせるようにと設計されている。
依頼時点では借家住まいだったご家族。不便と危険が渦巻くその借家を調査することから、計画は始まった。吊り戸棚に頭をぶつけることが多く、家具にもよくぶつかるなど、日常起こることをヒヤリング。通常の設計どおり、旧居から持ち込みたい家具のリストをつくり、基本設計の段階から家具の配置を考慮してプランニングは進められた。
奥さんの生活スペースは1階に集約。「スリッパは使いたくない」という本人の言葉がきっかけとなり、床材の種類と張り方を空間ごとに変えて、足裏の感触でどの部屋かを認識できるようにした。床材選びではもちろん本人にもサンプルを実際に触ってもらい、予算をにらみながら選定。それぞれのフロア材は厚みが違うので、下地の高さを変えて調整している。さらに足裏の感触と同時に、音も方向感覚をつかむ大事な要素と考え、聞き取りの邪魔になる反響を抑えるため、デザイン化された吸音壁を設けている。
障害のある人への配慮だけではなく、ご主人や娘さんたちにとっても心地よいように、空間を考え、色彩を吟味し、メンテナンスのしやすさも考慮した西の平の家である。
「西の平の家」 文/本間貴史
人間が得る情報は、約8割が視覚によるものと言われている。残された2割の情報、つまり視覚以外の感覚を有効に活用できる環境をいかに提供するかが、設計上のポイントと考えた。
まず、触覚情報からの空間認識である。人は立って移動する際、常に足の裏が建物に触れている。この足の裏の触覚情報を、空間認識のために積極的に活用することを考えた。各エリアごとの床材に「硬さの違い」「冷たさの違い」「働き幅(床材の幅)の違い」「張り方向の違い」などの情報を付加する試みである。寝室やリビングまどの居室は柔らかく暖かい木材とし、働き幅は広めのものを採用した。また廊下には耐摩耗性があり硬い木材を、それぞれのゾーンと直行する張り方向とし、わかりやすく単純な構成としている。さらに玄関や水まわりはメンテナンス性にも配慮した床材としながら、張り方向や働き幅に特徴を持たせている。
次に聴覚からの情報を活用することを考えた。音の出るもの(テレビ・ラジオ等)を決まった場所に置くことで、音源の方向をある程度は認識できるが、反射音や他の生活騒音がその妨げとなる。そこでより効果を発揮するためには、余計な音を緩和してくれる吸音壁が昼用と考えた。聴覚によって方向を認知させるランドマークとして、1階中央部に吸音壁を設けている。これは、高気密化による反響音の緩和の役割も兼ねてる。
一方施主の症例から、まぶしさへの配慮が必要であった。施主の部屋に直射日光が射し込まないように軒を深めに出し、庇を兼ねた形状にすると共に、畳コーナーを間に配置することで光のコントロールを行なった。
設計
株式会社 本間総合計画
担当
本間貴史 木本晋平
TEL
022-371-6616
施工
CM分離発注(オープンシステム)
掲載者
本間貴史
関連HP
株式会社 本間総合計画
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