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建築革命宣言!沖縄で取り組むオープンシステム6
  「CCI」 2007年7月号 沖縄で考える「建築革命」とは。建築を広く知ってもらうこと。一般の理解を深めること。/(有)青空建築設計工房 代表取締役 大城 直紀

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続 『建築革命宣言!』 〜オープンシステム/ピュアCMに挑む建築士たち〜

沖縄で取り組むオープンシステム6




沖縄で考える「建築革命」とは。

建築を広く知ってもらうこと。一般の理解を深めること。




寄稿
有限会社青空建築設計工房
代表取締役
大城 直紀 氏


●このままではいけない施工現場



オープンシステム全体で強く打ち出しているのは「建築革命」ということ。建築革命に対しての考え方や取り組みは各々の設計事務所でも違うだろうし、地域によっても異なるところだろう。

私が沖縄で日ごろから「このままではいけない」と感じているのが、施工現場のことだ。例えば公共工事を含めた規模の大きい現場では、現場監督と設計事務所、役所とコミュニケーションが上手くとれていない。

現場監督をはじめとする現場で働く人たち、監理している設計事務所、クライアントである役所、それぞれがそれぞれに対しての不満を口にする。こうした風景は、おそらく同じ建築業をする人ならよく目にしていることだと思う。

「良い建物をつくる」という一つの目的に向かって、ともに働く者同士、尊重しあって働くことができないものだろうか。水と油のような相容れない状態をどうにかできないだろうかと思う。それぞれの仕事内容と考え方が違うのは理解できるのだが、これを良い状態にしなければ建築業界全体の今後が危ういのではとさえ感じられるのだ。


●現場がわかる強みとは



設計事務所の業務としては、デザイン性向上のための追及が素晴らしいところである。しかし、設計事務所が描いた図面を実際の形に造り上げる現場監督たちにとっては、デザイン性ではなく施工のしやすさや段取りのしやすさが重要な部分であったりする。

建築士がデザイン性の高いものを描いたとしても、施工する人たちにとっては「何でこんな施工が面倒なデザインにするんだ?」というものになってしまう。実際にこうした言葉を耳にすることもあり、それを聞いていると、お互いの仕事を尊重できていない状況があることを痛感させられてしまうのだ。

現場監督から、担当の建築士にその疑問を問うことができるかといったらそうではない。その疑問が解消されないまま仕事をすることになるため、つい愚痴になってしまうのだ。設計事務所側も、そのデザインに込められたコンセプトを現場監督たちに対して説明しても「どうせわかってくれないから」といった認識を持ってしまっているのもあるだろう。

施工が面倒なデザインの図面を描いた建築士に対して、「あの建築士は、おさまりがわかってない!」というふうに施工側は言う。現場がわからないから、こんな面倒な図面を描くんだと言われているのだ。

図面を描くことを主な業務としている建築士の中で、「現場のわかる人」というのは少ないと思う。私の場合は、現場を経験して建築士になったから、現場の様子がわかる。これは当初、建築士なら当たり前のことなのだと思っていた。

ほかの設計事務所の方たちから「大城さんは現場経験者だから強いよね」と言われることも多かったのだが、その「強い」が意味しているものが何なのか、最初はわからなかった。しかし、設計の仕事をしていくにつれ、その意味をだんだん理解できるようになっていった。

現場のことをわかりながら図面を描いていく。現場の人たちにとっても、仕事がしやすい図面を描くことができるということは、図面の理解度に対するトラブルも少なく、施工もスムーズに進めることができるということだったのだ。




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●設計・施工・クライアント 尊重し理解すること



以前は一級建築士として図面を描く仕事をしていて、現在は施工会社の経営者になった方の話。本土で建築士として仕事をしていたが、沖縄に帰ってみると、「図面をきちんと形にしてくれる施工会社がいない」と憤りを感じて、自分で施工会社をつくったと話していた。

そういう施工会社の場合には、建築士が描いた図面を読み込んで、描かれたデザインをきちんと形にしようと取り組んでくれる。現場で働く人たちからも、「なんでこんな面倒なデザインにするんだ」というような不満も聞こえてこない。いい建物にしようという気持ちは、設計側も施工側も同じだけ持っている。

けれども、お互いの仕事を理解しようというコミュニケーションがうまく取れてないばかりに、お互いを尊重しあうことができず、不満につながってしまう

青空建築設計工房には、設計専門、現場監督経験者、営業経験者の複数のSTAFFがいる。今は落ち着いているが、部署を設置した当初はやはり大変だった。各々がそれぞれで主張を繰り返すばかりだったのだ。相手を尊重しながら仕事をするという考え方ができていない者同士、一つの会社の中に入れてしまったものだから、それぞれが「ありえない」という状況がしばらく続いていた。

確かに、住宅メーカーの営業担当者、設計事務所の建築士、総合建設業の現場監督、この三者が一堂に会したとして、和が保たれている場面というのは想像しがたい。その三者を良い方向に持っていき、何とか社内の和が保たれるようにするのは会社の経営者としてとても苦労した部分だ。

現在、自社の三つの部署それぞれに所属するスタッフすべてに望むことは、一人ひとりが三つの部署の業務をすべてスペシャリストとしてできるほどの人材に育ってほしいということだ。設計をしながらCMもする、現場指導もできる、すべての分野でスペシャリストとして仕事ができるようになってほしいと思っている。

公共工事の場合には、設計者、施工者、役所という関わりになるが、民間工事の場合には、設計者、施工者、施主という関わりになる。どちらにしても、相手を尊重しながら進めるということは大切なことだ。これをきちんと確立しておかなければ、今後の建築業界の繁栄や前進もないのではと思っている。

私たちの仕事は、施主の満足と幸福、スタッフの幸福、会社の発展の三つがきちんとバランスがとれた状態でなければいけないと思っている。バランスの取れた状態が保たれていれば、お互いがきっと良くなることだろう。






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●建築を広く知ってもらうこと




今後は、設計をする側がもっと報酬をもらえる体制を作れればと思っている。

設計事務所に働くスタッフは、クライアントの家は設計できるが、自分の家を設計するというのは、なかなか実現しづらいのが現状だ。こうした現実をぜひ変えていきたい。

その環境づくりをしなければ、今後、設計者を目指す若者たちもいなくなってしまうのではないだろうか。面接に来た学生たちに建築士のそうした現状を話すと、皆一様に驚いてしまう。

設計という業種、その役割にしても、社会的にもっと認知されることが必要だと思う。一級建築士事務所の数が多い沖縄でも、「設計事務所や建築士はどんな仕事をしているのかわからない」と言われている。知られていないからこそ、簡単にとらえてられているところもあるだろう。

メディアなども利用しながら、設計事務所や建築士の仕事とはどんなものなのかを周知させ、きちんとした報酬をいただけるようにしたい。そうすることで、今後、社会的発展にも貢献出来るのではないだろうか。

設計事務所や建築士の仕事を広く知ってもらうということが、設計者、施工者、クライアントの三者の和を築くことにもつながってくるのだろう。一般の多くの人たちに建築の仕事を理解してもらうということが、大きな効果を生んでくれると思っている。

オープンシステムで家づくりを経験した施主たちは、建築士がどんなふうに一枚の図面を仕上げていくのか、そういったところまで理解してくれるようになる。


ときどき施主の方から、「自分の担当者は仕事を抱えすぎじゃないか。もう少し減らしてあげたらどうか」と言われることがある。それは自分の家をおろそかにしてほしくないという気持ちの表れでもあるだろうし、その担当者への心遣いからでもあるだろう。そこで私も同じような発想でお話するのは、「もし、業務算定表通りに報酬をいただくことができれば、そうすることも可能です。

しかし、私たちの業務委託契約されている実際の金額と比べるとこうなります」ということ。そう話しながら業務算定表通りに算出した業務報酬と、実際の金額を比較して提示して見せると、すべてを理解してくれる。沖縄は特に業務委託費用が安いのが現状だ。ぜひとも、施主には家づくり期間中の経験で得た建築の知識を持って、これからもどんどん建築に関わってほしいと思う。

そんな施主が増えることで、一般の人たちにも設計事務所や建築士の仕事が、少しずつでも知られるようになるだろう。知られることで、仕事に対する妥当な報酬が理解されることにもつながると思うのだ。







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●より良い方向へ進むために



建築革命とは、クライアントとなる一般の方たちに建築について理解してもらって始めて成し得るのではと思う。

自分たちの仕事をより良い方向へ持っていくためには、広く知ってもらうこと。沖縄の建築をどれだけ良い方へ進めることができるかは、現在建築の仕事に携わっている自分たちの取り組み、努力次第だと思う。

沖縄県内の建築業界は、本土から入ってきた大手企業に押され気味だ。たくさんの研究開発費用をかけて仕事をしているところには、地元の小さな企業は太刀打ちできないというのが現状だ。そのままだと、県内の建築業界全体が潰れてしまう恐れもある。

「オープンシステム沖縄」を組織したのは、そうならないための一つの方策でもある。一つひとつは小さいかもしれないが、集まって考えれば対峙することができるのではないか。そうして、伸びていくことを願っている。


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