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建築革命宣言!沖縄で取り組むオープンシステム5
「CCI」 2007年6月号 「このままではいけない」。前進するための挑戦。「必要なこと」、「やるべきこと」を見つけることが良い変化を生む /(有)青空建築設計工房 代表取締役 大城 直紀
続 『建築革命宣言!』 〜オープンシステム/ピュアCMに挑む建築士たち〜
沖縄で取り組むオープンシステム5
「このままではいけない」。前進するための挑戦。
「必要なこと」、「やるべきこと」を見つけることが良い変化を生む
寄稿
有限会社青空建築設計工房
代表取締役
大城 直紀 氏
●変化することを恐れず、前進を考える
沖縄でオープンシステムに取り組む仲間で組織している「オープンシステム沖縄」は、今年で設立から2年を迎える。
オープンシステム沖縄を含め、青空建築設計工房としても、この厳しい状況が続く中、生き残っていくためには前進し続けていくことが大事だと考えている。
おそらく、ほかの設計事務所からすると「ここまでやるか」というようなこともあるかもしれない。
しかし、ますます厳しさが増していく現在にあって、将来を考えるのなら、今までの常識のままいてはいけないと思うのだ。自分たちが前進することで、周囲の設計事務所にも何かしら変化が起こってくるのではないか。
私が沖縄でオープンシステムに取り組み始めたとき、周囲に受け入れてもらえるまでに時間がかかったように、こうすべきだと信じたものを続けることで、周囲にも「自分たちもこういうことをしなければいけないんだ」と思ってもらえるようになるのではないか。
今までの設計事務所は受身の態勢から変化することはなかった。良い方向への変化を自ら起こしていかなければと思うのだ。
●やれることを広げてみること
設計事務所の働きとして、以前からやってみようと考えていることがある。例えば住宅の場合、設計をするだけでなく、良い品質の資材や設備器具を安価に取り入れることができないかなど。国内だけでなく海外の製品にも目を向けている。良いものであれば、現地から直接取り寄せて使えるようにしたいと考えている。ほかにも家電量販店や家具店とのタイアップなども動き始めた。
資材や設備器具を安く取り寄せて使うことができれば、おのずとコスト削減につながるため、もうすでに取り組んでいるところも多いだろう。しかし、家電量販店や家具店とのタイアップについては「なぜ?」と思われるところだろう。
施主は、家を新築する際に家電を新しいものに買い換える人がほとんどだ。家電製品そのものや、それを購入する店を設計者である私たちが紹介することで、私たちにメリットが生ずるわけでもないが、これも施主に対してのサービスの一環として考えている。
新築時には大きな金額が出ていく。建物以外にかかる負担を少しでも軽減することにつながればということだ。建物の品質と価格についてだけでなく、その中に取り入れるものにまで配慮する。「何でそこまでやる必要があるのか?」と言われそうな話だが、私にすればこれでも「まだまだ」といった感じだ。家具についても同じようなことができたらいいと思っている。
家づくりは「ここから、ここまで」というふうに自分たちで境界を設けてしまえば、私たちの仕事もそこで終わりかもしれない。しかし、「ここまでもやりましょう」というふうに一歩広げてみれば先はどんどん広がっていく。施主とのそうした付き合い方も大切だと思っている。
●次にやるべきことを見つける方法として
家は入居後もメンテナンスが必要となる。引き渡し時には、10年後、15年後のメンテナンスの相談も行っている。
青空建築設計工房では、3年前にISO9001、2000を取得したが、その中でも取り決めているのが、1年・2年・3年・5年・10年の定期点検。点検をほぼ毎年行うよう決めている。
定期点検の際には、毎回施主にアンケートに回答してもらっている。引き渡し後すぐのアンケートでは建物が完成するまでの家づくり期間中のことについて。入居後のアンケートでは、住んでみて不具合がないか、使い勝手が悪い箇所はないかという内容で進めていく。設計担当、CM担当の複数で訪問し、現状を見ながら住み心地について直接確認していく。複数の担当者で行くことで、重ね重ねの確認がされているわけだ。施主の回答をもらうことで、私たちが次にやるべきことが見えてくる。アンケートを通しさまざまな話をすることで施主が相談しやすい環境づくりにもつながっている。
施主に行うアンケート調査は、オープンシステム沖縄でも独自に行っており、完成引き渡し後、2年目に行うこととしている。青空建築設計工房では、設立当初から独自で行ってきたもの。年々点検する世帯数は増えていくが、私たちが点検に伺うことで安心につながり喜んでいただけている。また、ちょうどその時に親せきや友人などの間で「家づくりの話が持ち上がっている」という話があると、それが紹介につながったりもしている。定期点検を行いながらコミュニケーションを続けることは、設計事務所が最も不得手とする地道な営業にもつながっているのだ。
私たちが行っている家づくりは、店頭で既製品を買うのとは違う。まず施主がイメージしている住宅の絵を描き、図面をつくり、金額を調整してつくっていく。すべてハンドメイドでオーダーメイドでもある。家づくり期間中に築いた信頼関係は、家が完成した後も続くもの。だからこそ、大切に継続していくことを考えなくてはいけない。家づくりは奥深いもの。私たちが現在やっている仕事については、80点をもらえればいいと思う内容だ。それ以上を目指すためには、常に次を見据えて進んでいかなければ。私たちがやるべきことにゴールはない。
●知ってもらうことが始まりになる
青空建築設計工房では設立当初から広告活動をしている。新聞や雑誌などの紙媒体、路線バスの広告、路上看板、ラジオCMなど、種類も多く活発に行ってきた。こうした広告活動を行うことも、変化するための一つの方法として考えたものだ。
もちろん周囲からは「なんで設計事務所がラジオCMをやってるの?」と聞かれたこともあった。広告活動をする目的は、多くの施主との出会いを生むためとして行っていたが、オープンシステムに取り組み始めてからは、この素晴らしいシステムを1人でも多くの人たちに知ってもらいたいということが加わった。やはり、より多くの人にアピールするには、メディアを利用することが効果的だ。何事も知ってもらうことが始まりなのだ。
オープンシステム沖縄でもそのスタイルが生かされている。「設計事務所が広告を出すなんて」という常識があった中で、同じものに取り組む仲間といえど、広告活動を同じように行っていくということが受け入れられるだろうかという不安がないわけではなかった。おそらく、青空建築設計工房で積極的な広告活動を行った結果、受託件数が少ない状況だったのなら、受け入れてはもらえなかっただろう。「現状のままではいけない」と考え、オープンシステムを取り入れた仲間たちにとっては、「それも必要なもので、やるべきこと」というふうに受け入れられたのだ。
●「オープンシステム沖縄」の仲間たちとともに
オープンシステム沖縄は、現在8社で構成されている。各々の会社があり、その個性を生かしながら、協調性を持って歩んでいる。皆が歩幅を合わせて歩きながら基盤作りをしているところと言っていいだろう。
青空建築設計工房以外の設計事務所が新たにオープンシステムに取り組み始めたばかりのころ、最初は皆不安を抱えていた。それでも無事に業務を行えるよう、先に取り組んでいた私たちが協力を惜しまずやってきた。1年が経過したころ、仲間たちから「青空さんのフォローがあったから、トラブルもなくやってこれた」と言葉をもらった。とてもうれしい言葉だった。その仲間たちが今後も経験を重ねていけば、アドバイザー的存在になることができる。そうしていくことで、さらに組織としても強化されていくだろうし、新たに会員が増えたとしてももう心配は要らない。
私以外の代表の方たちは、次の世代にバトンを渡すことを考えている先輩たちだ。その先輩たちは、長年、沖縄で建築に取り組み、真摯に活動してこれたことに対して、何か還元できることはないか皆考えている。その状況の中で、オープンシステム沖縄でできることは何か。
オープンシステム沖縄を構成する設計事務所の代表の方々は、沖縄の建築業界の中でも一目置かれている人ばかり。こういう先輩たちと貴重な時間を共有できることに、とても感謝している。こうした先輩たちに囲まれながらも、私がオープンシステム沖縄の会長になれたのは、どこよりも早く取り組み、ノウハウを無償で提供したからということもあるのだろうが、その先輩たちが今後を見据えて、私に期待を寄せてくれているということもある。そう考えてくれていることに対しても、とても感謝している。そうした先輩たちの気持ちに応えるためにも、さらに精進していかなければと思う。
オープンシステム沖縄での活動を続けることで、沖縄で家を建てる人たちにとって「一つの選択肢」として確立される日が遠からず来ると思う。柔軟な動きが取れる現在の状態を維持しながら発展させ、ぜひともそういう体制づくりをしていきたい。
私は「受身の態勢の設計事務所から変化しなければいけない」と考え、いろいろなことに挑戦してきた。その中でオープンシステムに出会い、オープンシステムを通して、多くの素晴らしい施主たちとの出逢いがあった。それに加えて、同じ志を持ち、同じものに取り組める新たな仲間もできた。そんなオープンシステムにとても感謝している。低迷していると言われている建築業界の中でも、ニーズに答えられていると自信を持って言えるシステム。沖縄の建築業界に一石を投じることもできたのではと思っている。沖縄の建築業界全体が良い方向へ向かうよう、これからは仲間たちとともに「良い変化」を続けていきたいと思う。
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【CCI 】
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