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建築革命宣言!沖縄で取り組むオープンシステム2
  「CCI」 2007年3月号 施主の身近にある設計事務所であることが“いい家づくり”につながる。変化が求められる設計事務所へ…青空設計工房の場合。 /(有)青空建築設計工房 代表取締役 大城 直紀

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続 『建築革命宣言!』 〜オープンシステム/ピュアCMに挑む建築士たち〜

沖縄で取り組むオープンシステム2


施主の身近にある設計事務所であることが“いい家づくり”につながる。
変化が求められる設計事務所へ…青空設計工房の場合。


寄稿
有限会社青空建築設計工房
代表取締役
大城 直紀 氏


● “わからない存在”の設計事務所 


 数年前にリフォームの依頼があった施主の話だ。ある建築士に家を建ててもらい、まだ完成間もないのだが「住みづらく、夏は暑い、冬は寒いから何とかしたい」という。

なぜ、その建築士にリフォームの依頼をしないのかと聞くと、「とてもそんなことは言えない」という。では、なぜその人に依頼したのかと聞くと、「人気のある建築士だったからお願いした」ということだった。

 新聞や雑誌でよく目にする人気の建築士に家づくりを依頼する。その建築士をまるで“有名人”や“大先生”といった、どこかかけ離れた世界の人を見るような眼差しで見つめる。
すると、自分たちの日常のことや、要望していることが稚拙に思えてきて、口にするのが何だか恥ずかしいような気持ちになってくるようだ。自分たちの本当のところを伝えきれないまま、建築士が提案するプランにうなずき、それが“わが家”となって完成を迎える。

しかし、住み始めてみると、住みづらさを感じ、予算の余裕があれば別のところへリフォームを依頼する。そうしたケースだ。

 沖縄では、住宅の場合でも設計事務所に依頼することが本土と比べると断然多い方だ。だれでも、身内や友人の中に、必ず建築士や設計事務所で働く人がいるといっていいだろう。県民の総人口に占める建築士の割合は全国でもトップレベル。それでも、一般の人々の中に建築士という存在や仕事がしっかり浸透している、ということでもない。

 先のような施主の話は、建築に携わっている私たちに対しての率直な声だろう。そんな話を聞いて、施主さんにとって建築士とは「かけ離れた存在であってはいけない。何でも話せる存在(パートナー)でなければいけない」となおさら思うようになった。

 おそらく、建築に携わっている人たち以外にとって、建築士や設計事務所のことを“よくわからない存在”のように感じている人は多いと思う。どんな仕事をしているのか、どんな仕組みになっているのかということのわかりにくさが、そうしたある種の「距離感」を生み出しているのだと思う。

 一昨年暮れから大きな話題になり、問題になっている耐震偽造などのこと。その話題が国会で議論されているのを見ていても、果たして参加している議員やそれを聞いている人たちの中に、建築業界のことを熟知している人がどれくらいいるのだろうかと思った。建築業界の仕組みがわからなければ、議論は妙な方向へ進むばかりではないか。

 問題がクローズアップされ、テレビや新聞を始めとして、さまざまなメディアが建築業界について取り上げた。

設計監理と現場管理の違い、それによる責任の所在などについて解説されることもあった。見ている人にとっては、この業界の「わかりにくさだけ」がより明確になったのではないかと思う。建築に携わる人たちと、そうでない人たちの間の「距離感」が生む大小さまざまな問題が、今後も出続けるのだろうと容易に想像することができた。

 今後は、そうしたことを受けて、建築そのものや建築業界自体が変化していくのだと思う。建築に携わる人以外にとって、これまでよりは「わかる」存在へとなっていくのだろうか。

設計事務所の責任や存在の「重さ」も、それなりに増していくことだろう。今後も設計事務所を続けていくのなら、常に進化・発展の道を歩き続けなければいけない。
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● CM部を置いた理由 




 青空建築設計工房には、業務の円滑化とフォロー体制の充実を図る為、設計部・コンストラクションマネージメント(以下、CM部)・総務部の3つのセクションがある。一組の施主の家づくりを一つのプロジェクトというスタイルで進める。

各セクションの担当者3〜5人でプロジェクトメンバー(CAST)が構成される。施主の数だけプロジェクト&ストーリーがあり、3つのセクションが三位一体となって進めなければいけない。毎回同じ顔ぶれで構成するかというとそうではない。

 現在、CM部は4人、設計部は12人、総務部2人。今までのデータを基に建物の概算を出して施主さんと打ち合わせを行い、業者間への交渉などを行うのがCM部。

施主の要望を受け、図面にしていくのが設計部。更にCM・設計両部門は設計監理の延長上の仕事を行い、施主の立場で施工中から現場品質をチェックする業務を行う。家づくりが進んでいく際、その担当者らが施主の窓口となる。

 おそらくCM部について疑問を持たれるだろう。設計事務所でありながらCM部というセクションを設けているところはあまりないと思う。

設計監理をする中で、実際現場を熟知している人が設計部と共に監理したほうがよいというのが私の考えだ。そのため設計監理の延長に、現場監督の経験があり、設計にも携わってきたスタッフで構成するセクションを置いた。

 
写真沖縄でオープンシステム(以下、OS)に取り組む際、本土でのやり方そのままではできなかった。沖縄の地域性や、それまでの独特な慣習も取り入れながら実行しなければいけない。その点からもCM部を置く必要性があったのだ。

 通常の現場では現場監督がいるが、OSの現場では現場監督はいない。けれども、現場品質をチェックする人が必要となる。

しかし、建築士がチェックすると、施工している職人や施主から疑問の声が上がる。特に設計担当者が女性だったり、若かったりするとそれだけで不安になるようだ。それをなくすためにも、現場経験が豊富で、施工についてもプロフェッショナルがいる、施主の立場で現場品質をチェックできる人が必要であったということだ。

だからといって設計担当が監理が出来ないと言うのではなく、2重3重のチェック体制をしていると理解頂ければ良いでしょう。それが専門工事業者にも良い緊張感を与えているということだ。

 OSでは、各専門工事業者が元請になって施工する。各業者には施工管理者がいるから、現場指導は本来は必要ないのかもしれない。各々の業者が連絡を取り合って、段取りよく現場を進めることができればよいのだが、OSが始まって3年の沖縄では、業者全体がOSに初めて携わることの方が多い。

業者全体がOSに慣れるまでは、こちら側で補うことも必要だ。現場がスムーズに進んでいくためにはCM部の存在は必要なのだ。そうやっていく事で、専門工事業者の中にもOSの仕組みが浸透し、少しずつスキルアップしていくであろう。

た、専門工事業者にしても、建築士に踏み込んでもらいたくないという部分がある。その場合でも、CM担当者が現場経験があるということで話を聞いてくれるようになる。そして、施工する上でおさまりが悪い場合には、設計担当者とCM担当者が協議して答えを出し、施主に説明して進めることもある。

特にそうした場合には、若手や女性の設計担当者と一緒に現場の専門家がいるということで、施主の安心感を高めることにもつながっている。

 CM部を置く必要性は、対外的なものばかりではない。OSに取り組む場合には、設計だけでなくCM業務も行い、現場も見るということが必要となる。その仕組みを社内にも浸透させ、理解、納得させるためにも必要だったのだ。

 基本的には、現場と設計、常に同じ目で両方こなせるスタッフに育てていきたいと考えている。そうすることができれば、いずれは三つに分かれているセクションを一つにまとめることができるだろう。

一人ひとりがOS業務のすべてに対して、オールマイティに対応できるようにしていきたい。OSに取り組み始めて三年がたち、「CMをやってみたい!」、「現場を見たい♪」とスタッフから声が上がるようになった。ようやく社内でもOSが浸透してきた。


● 身近な建築であること 

写真 建物に欠陥があった場合、設計監理した設計事務所の責任は問われる。

設計事務所は「施工は施工管理できるところに依頼したから、自分たちには責任が無い」とは言えない。

今後は、設計事務所も現場が見れる(わかる)ようにならなければいけないと思う。

現場を施主の立場で見るということだ。おそらく、そうするためには、設計事務所も変化することが必要なのだと思う。

そうしなければ今後の生き残りはないのではないか。

沖縄でも公共工事が減少し、民間工事への移行が急速に進んでいるのが現実だ。

特に沖縄は本土に比べて公共工事が多かった分、その打撃は大きい。

その現状の中で、当たり前のことが当たり前にできて、最終的に施主に喜んでもらえる仕事ができるところが今後も生き残るのだろうと思う。

そのためにも、机の上の考えで終わらせるのではなく行動が伴わなければいけない。

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父の時代、家をつくるときには施主も加わって皆で板図面を描いて造っていた。

昔から沖縄には「ゆいまーる」という言葉があり、家を建てる時には隣近所の人たちが集まって作業を手伝った。
作業の後は一緒に食べて飲んで楽しんだ。

今よりももっと“建築”が身近にあり、“わかる”存在だった時代なのだと思う。
それが何よりも当たり前のことだったのだろう。

人にとって身近な建築であり、当たり前の建築であるための変化が、今は必要なのかもしれない。
ある意味この「建築革命」は、争いとかのレベルではなく、その物を本来あるがままの形に戻すための行動だと私自信感じてます。

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