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建築革命宣言!沖縄で取り組むオープンシステム1
「CCI」 2007年2月号 予算内で無理せず、要望を形にしたい。住む人が喜ぶ家を建ててあげたい。建築の仕事を通して喜んでもらうこと、それが社会貢献につながる。/(有)青空建築設計工房 代表取締役 大城 直紀
続 『建築革命宣言!』 〜オープンシステム/ピュアCMに挑む建築士たち〜
沖縄で取り組むオープンシステム1
予算内で無理せず要望を形にしたい。
住む人が喜ぶ家を建ててあげたい。
建築の仕事を通して喜んでもらうこと、それが社会貢献につながる。
寄稿
有限会社青空建築設計工房
代表取締役
大城 直紀 氏
● 施主が抱く不満との最初の出会い。
中学のころから休みの日ともなれば、父親が営む建設会社の現場に向かわされ、建築現場で働く職人の手元、労務として働いていた。子供の手伝いというより、強制的に働かされているという感じ。うちでは「働かざるもの食うべからず」という教えがあって、親の言うことには絶対従うことが鉄則だった。
最初はイヤイヤだった建築現場での手伝いを通して、職人さんの“ものづくり”の様子をずっと見ていた。もともと、ものを作ることが好きだったから、職人さんが一つひとつ完成させていく過程に目を輝かせ、完成したときの喜びや達成感を子供ながらに感じていた。そんな職人たちを尊敬し憧れたが、働く現場は激務で、休日もなく辛いことが多かったから、絶対現場で働く人にはならない!と子供心に決めていた。
それでも高校を卒業し、そのまま建築の現場へ。しばらくは主に民間住宅の建築現場で働き大工兼現場監督の職務をこなし。そこで施主の生の声を聞き、考えることになった。
施工が進み、徐々に形になっていくのを楽しみにしている施主。しかし、足場をはずし家の外観がわかるようになると、「イメージと違う」。完成間近の住宅に対して「こんなはずじゃなかった」と言う。
ほかにも細かい不満が口をついて出てくる。建築士が描いた図面を基に作業をしている自分たちにとって、指示通りの材料を使い、指示通りに作れば、こういうふうに仕上がるのは当然なのだが、どうやらそれが明確に伝わっていないようだ。
なぜ建築士は伝えないのか。お金を支払う側に「どんなものができる」というふうに明確に伝わっていないことに、とても疑問を感じ、建築士の仕事はナンセンスだと思った。
そうしたことを通して、現場でのいろいろなものに疑問を持つようになった。
● 建築業界への疑問。
下請で入った現場で作業をしていると、施主さんから「ここをこうできないか?外構もやってくれないか?金額はどのくらいかかるのか?」と聞かれた。作業中にコミュニケーションが取れていた施主さんで、現場で働く職人たちのこともよく知っている施主さんだった。当時、概算の数量を拾うことはできていたから、大まかな金額の算出は可能。「だいたい、このくらい」という話をして会社に戻ると、元請会社からクレームの電話。「勝手なことをするな」。その時は、何でそう言われるのかわからず、元請、下請という仕組みさえもわからなかったのだ。
施主さんの家をつくる現場で実際に働いているのは、ほかでもない自分たち。仕事をしている自分たちは、施主さんに「ここまでお願い」と言われて、ただ喜んでもらえたらいいだろうと思ってしたこと。素直によかれと思ってやったことに「勝手なことをするな」と言われ、さらに疑問はふくらんでいった。
それから月日を重ね、建築業界のことがわかってくると、元請と下請の関係で生ずる中間マージンを含め、余分なお金を施主が支払っているのがわかった。高い金額を支払っているのにもかかわらず、自分たちが「イメージしていたものと違う」ものができ上がり、つくり直すこともできないから、施主はそのまま支払いを続け、住み続けなければいけない。それを見る中で、自分が設計者なら「自分のイメージしていたものと違う」というようなことがないようにするのに、と考えるようになった。
模型を作ったり、図面を基に建物の展開図を作って説明したり、カタログや使用する本物の部材を見せたりしながら話したら、絶対にこういうことにはならないのではないか。それは無理なことではなく、イメージを明確に伝え、「思っていたものと違う」と言われないためなら普通にできることだろうと考えたのだ。それをやろうと思ったのが、現在の青空建築設計工房の設立につながった。「こうすればもっと施主に喜んでもらえる」と思ったのがスタートだった。
● “喜んでもらう仕事”その先にあるもの。
設立当初は下請の設計でしか食えなかった。その仕事の中でも「あと何百万足りない、だからこの部分は妥協しないといけない」という場面に何度も出合った。
しかし、この何百万足りない、というものの中の一部は中間マージンとなるわけで、現状でも利益は出ている。
なら、追加予算の中の利益に相当する分で施主のイメージを少し具現化できるように設計して、それを建てればいいのではと思ったのだが、どんな部材、設備など、何であっても、全部追加扱いになってしまう。
最初に「坪単価いくら」と言っていても、ふたを開けてみれば追加の山になり、費用はふくらんでしまっている。
施主は契約書に印鑑を押した後だから、もう逃れようがないのだ。それが気に入らなければ、契約金を破棄してよそに行くか、といった状況も起こる。そういうスタイルは違うと感じていた。
仕事をしていく中で、建設会社とは家づくりのための会社ではないと感じていた。同じ業界に身を置く者として、こういうふうに言うと周囲からクレームが来るかもしれない。私が知る一部の会社の話だが、その会社は、会社を儲けさせる、もしくは営業が儲かるシステムになっているところがある。
確かに会社の利益がでることは悪いことではないのだが、会社の発展や、そこで働く社員の幸福を実現する前に、金額を支払う施主の満足、でき上がりに納得し、喜んでもらえる仕事を提供するということが、何よりも先にないといけないのではと考えた。
家が完成した施主から、家をつくった会社に「自分の知り合いで家をつくりたいと考えている人がいる。ぜひ相談にのってあげてくれないか」という紹介はどのくらいあるだろうか。
なぜ、そういう紹介の話がないのかというと、そこで家をつくった施主は、でき上がりに満足してないのではと思うし、家づくりの段階で何らかのトラブルがあったりして、家づくりが楽しいものではなかったのではないかと考える。イヤな思いをしたのなら、自分の周囲の人たちに同じ思いを味あわせたくはないから、とても紹介する気にはなれない。家が完成した後の施主から、周囲の人を紹介してもらえるような仕事をやっていけたらと思う。
● 予算内で要望満たすため、分離発注へ。
建築現場で働いているときからの友人がいる。私が設計事務所をやっているというのを知り、「家をつくりたいのだが、相談のってくれないか」という話になった。
最初は設計だけの話。話を進めていくうちに、本人の要望と予算が合わないという。
予算内で友人の要望するものをつくろうと頑張ったのだが、どうしても予算が足りない。工事は通常通り、元請となる建設会社と一括請負契約をする予定で進めていた。なんとか要望を満たす方法はないか考え、工事を分離発注することにした。
それまでに経験した仕事を通し、さまざまなケースの施主を見て、前々から考えていた分離発注方式。予算内で本人の要望をすべて満たすこともでき、分離発注にすることで設計以外にも動きが多くなる私の分も人件費が出る。それを話したら、友人も承諾してくれた。
通常よりも現場に足を運ぶ回数も多くなり、細かい現場チェックも可能になった。1業種3社の見積もりを取った。知り合いの現場で下請をしていた専門工事業者の皆さんを集めて、金額を調整し、きちんと本人の要望を満たす建物を作れるよう調整して進めた。
これが私が分離発注を手がけた最初のケースだ。もちろんオープンシステムを始める前のことである。
● オープンシステムとの出会い
分離発注をし続けるために、頭を痛めていたのが保証の問題。
各々の業者が責任持つという点は、今のオープンシステムと変わらないのだが、万が一、この業者が倒産した場合や、工事できなかった場合には動きが取れない。
そして何よりも現場で事故があった場合が一番怖かった。
早々に自社のホームページを開設し、その中では「分離発注システムでの家づくりを行っています」と掲載していた。
設計事務所がコストパフォーマンスして進める家づくりということで表していた。
そうして進めているうちに、ホームページを見た方からメールが来て「あなたと同じことをやっている団体がありますよ」と教えてくれた。
早速そのメールにあったアドレスをクリックして開いたのが、オープンシステムとオープンネットのホームページで、2003年始めのことである。
当時ホームページで紹介されていた設計事務所の数は約250社であり。日本全国、いろいろな地域の設計事務所があり、その規模もさまざまで。その中から年齢が近い人たちに、オープンシステムについてメールで直接質問してみた。返ってきた返事を読むと、やはり私がやっている分離発注と変わらず、保証もついている。
さらに全国的なネットワーク。それを確かめたとき「これだ!」と思った。同じ志を持った人がこんなにいる!と鳥肌がたった。
しかし、すぐには入会せず、組織を客観的に見つめる期間をおいて、きちんと考えてからスタートしようと動き始めたのが2003年11月のこと。その後、正会員になって現在に至たっている。
● 「そんな上手い話、あるはずがない」。
正会員になって意気揚々とスタートし始めたのだが、分離発注自体が認知されていない状態だった。
「分離発注とは」という説明をすることからのスタート。「オープンシステム」そのものが「怪しいもの」と思われることもあった。
中間マージンを省けるなんて、そんないい話はないということだ。
取り組み始めた当初、うちを訪ねてきた施主の中には、「インターネットの掲示板サイトでオープンシステムのことを読んだ。青空さん、今のところ実績少ないですよね。
掲示板に書かれているオープンシステムの話を読むと、信頼できないし、正直言って怖い」と話す。その掲示板サイトには、オープンシステムを誹謗中傷する書き込みがされていたようだ。
しかし、その後は「掲示板ではそう書かれているけれども、大城さんのことは信じられるし、熱意を感じる。だからあなたを信じて、オープンシステムでやってみたい」と言ってくれた施主に出会うことができた。
2年ほど前に完成した住宅の施主さんも、最初は「こんな上手い話あるはずがない、怪しい」と話していた一人だ。
それでも設計を進め、最終的には大満足してくれた。その後は親せきや友人、知人など何件も紹介が続いている。
Kさんというこの施主は、設計・施工含めて約1年の家づくり期間をご一緒させていただいた。
「オープンシステムが信じられない」と話すだけあって、少し疑問が湧くと、すぐに電話がかかってくる。
納得いかなければ、とことんまで話し合う。事務所ではもちろん、居酒屋で酒を飲みながら、あれこれ話をすることもあった。
そういうものを含めて、Kさんと行った打ち合わせは数え切れるだけでも大小含め100回を超えるのではと思う。そういう中で、家づくりの依頼先と施主という絆は、それ以上に深まっていったと思う。
Kさんの住宅が完成を迎えたとき、「完成はうれしいけど、なんだか心にポッカリ穴が開いたような感じ」とKさんは話してくれた。「これからも引き続き、お付き合いをよろしく」と言うと、とても喜んでいただいた。
現在もKさん家族といいお付き合いが続いている。こちらに何かあれば応援してくれるし、こちらもKさん家族の祝い事などには駆けつける、親せきのような間柄となったようだ。
オープンシステムは「一緒に家づくりの期間を歩む」というふうに進む。Kさん家族と一緒に歩んだ家づくりの期間をこんなふうに喜んでもらえた、そのことを心からうれしく思っている。
● 住む人の喜ぶ家であれ。
家づくりはほとんどの方が始めてのことだ。 だから「青空建築設計工房ではオープンシステムで家づくりを進めるのが当たり前だろう」と思っている施主は少なくない。
だが、家づくり2回目の方や、集合住宅の2棟目、3棟目を建てられる方などは「もっと早くにオープンシステムを知っていれば、最初からお願いしていたのに」ということを話してくださる。
別の会社で建築中の施主にも「ほかに土地を探しているのだが、そこではお願いするね」と話してくれる方がいらっしゃる。また、現場は着工してないが、ある程度形が見えてきた施主から「次は、ここにも土地があるから、店舗兼共同住宅を企画したい」という話があったり。
家づくりや建物をつくる経験をした方は、ほかとの違いを理解してくれているので、こちらもさらにやる気が出てくる。初めての家づくりを経験して、心からうちに頼んで良かったと思ってくれた方が、次を紹介してくれる。それは本当に心強い。
自分がやっているオープンシステムというスタイルに自信も持てる。
私は建築士の資格を取得し建築設計の仕事をしている。しかし、建築専門の学科や学校を出たわけではない。どちらかというと、一般の人と同じ目線で建築を捉え、考え、自分の目で見て疑問に思ったことを解消できるように取り組んできた。
「だれが住む家なのか」を考えたとき、設計や施工をする側の好みや都合、技術を自慢するだけの建物になってはいけないと思った。家は住む人が喜ぶものであれ、と思う。私が仕事をしている意味はそこにあると思う。
建築設計を生業としていくのなら、この仕事で施主さんを徹底満足するまで喜ばせたい。
それが社会貢献の一つだと思っている。
それがサービス業の原点だし、初心を忘れず歩み続けたい昨今である。
DATA
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
大城 直紀
(35歳)
(有)青空建築設計工房 代表取締役
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■会社概要
1998年 (有)青空建築設計工房設立。
参加団体:(社)沖縄建築士会(青年委員会 副委員長)
オープンシステムネットワーク
沖縄県建築設計事務所協会
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
■連絡先
(有)青空建築設計工房
沖縄県宜野湾市真栄原3‐19‐31F
TEL:
098-890-7000
FAX:
098-890-7788
E-mail:
info@aozorasekkei.com
URL:
http://www.open-net.jp/site/page/jimusho/japan/kyusyu/okinawa/aozora/
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