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建築革命宣言!価格の見えるグッドデザイン(4)
「CCI」 2006年8月号 OS#03「リストランテ ミニーニャ」/(株)アトリエ・ラッツ 代表取締役 古後 信二
続 『建築革命宣言!』 〜オープンシステム/ピュアCMに挑む建築士たち〜
価格の見えるグッドデザイン
第4回 OS#03「リストランテ ミニーニャ」
寄稿
株式会社アトリエ・ラッツ 一級建築士事務所
代表取締役・最高経営責任者
古後 信二 氏
●リストランテ ミニーニャ
「リストランテ・ミニーニャ」は大分市の中心繁華街である都町の一角に立地する地中海料理レストランである。
スロウダイニングビルというコンセプチャルなリノベーションビルの1階に2005年4月にオープンした。
テーブル席14、カウンター席5、計19席の小さなレストランである。オーナー兼シェフとホール係りの2〜3人で運営されている。我々にとって初めての商業空間のデザインが実現した作品である。
●クライアントとの出会い
クライアントとの出会いは2001年にさかのぼる。
我々の処女作のオープンハウスが最初の出会い。料理人として一国一城の主として世に出て行こうとする方であった。同い年でもあり、ジャンルは違えど、独自の道を究めようとする職人魂にひかれあい、すぐに、内装デザインのオファーを頂き、テナント探しからお手伝いをする事になった。しかし、いかんせん資金不足。我々のデザイン料も出世払い前提。経営面でのリサーチが乏しいのも見て取れた。様々な不測の事態が重なり、計画は頓挫する。
「3年後にまた一緒にやりましょう」との言葉を最期に音信が途絶えていた。そんな約束を忘れていた2004年の年末、計画再開の電話を頂いた。3年あれば夢は実現する。そんな姿に遭遇できた我々も感動し、なにはともあれ、全面的に協力させていただく事になった。
●ミニーニャのコンセプト
ミニーニャとは子猫ちゃん、お嬢ちゃん、という意味の造語である。大分の若い女性をターゲットとし、さらに、繁華街で働く若い女性までを含んだ「子猫ちゃん」達が集まってくるレストランというコンセプトである。
クライアントが猫好きであり、我々も猫派。猫をモチーフとしてデザインが進められ、クアイアントがスペインバスク地方で見た、白いカタコンペにたたずむ猫のイメージが決めてになり、壁と天井を猫の背中の曲線で構成し、白く染め上げるという方向性が確定していった。
クライアントとのキャッチボールの醍醐味である。
●オープンシステム奮闘スタート
3年間で資金作りと各地での修行を経て2廻り以上大きくなったとはいえ、潤沢な資金とはいかない。
さっそく、オープンシステムを提案し、限りある軍資金を有効に活用していただく事になった。
デザイン面においては、全面的にラッツにまかせてくれた。ラッツの空間を創ってください。そんなうれしい言葉を頂いた以上、こちらも当然熱が入る。しかし、予算は限られている。ジレンマに陥りながらも、コンセプトの具現化に精力を上げた。
●見積終了
見積り作業は、第1号に参加してくれた専門工事会社さんをベースにスムーズに進行していった。
取りまとめが終わったが、デザインに熱が入り、大幅アップとなった。これは日常茶飯事である。ここから、贅肉を絞り込む作業となる。
特注家具を既製品に変更したりと地道な調整作業を経て、予算内に納まる。むしろ、よりスッキリとして、いい空間デザインとなった。贅肉を絞り込む事で美しさが増す。
建築家のエゴを見極め、本当に必要なデザイン、合理的な納まりを追求する。アトリエ・ラッツの仕事の特徴でもある。原価がはっきりしているオープンシステム。
あちらを減らして、こちらを増やして。
ぎりぎりの選択が可能であるし、タイムラグがなく、すぐに減額予算も構築できる。明快である。
●資材搬入
店舗の前に100円パーキングがある。そこをうまく活用しながら、職人さん達も現場のやりくりをしてくれた。
資材もスペースがないため、必要な分だけを小運搬する事になる。今回も建材卸から直接発注し、我々の資材仮置き場にまとめて運送してもらい、我々の機動力である「サニートラック」でこまかに納入していった。
建築家がそこまでやるのか、という声もよく聞くが、我々はむしろ楽しみながら行っている。若い女子スタッフが合板を1枚づつ運ぶ姿には胸を打たれたりもする。体で合板の重さを知る事で図面の書き方も変わってくるはずだ。また、廃材の撤収も、小分けにしたものを、ちょこちょこと運び出してもらう段取りとした。
●他店舗への配慮
両隣と向かい、さらには2階にも飲食店があった。
できるだけ迷惑をかけないよう、夕方からの営業時間には工事はできるだけ控える事とした。クライアントが近隣このコミュニケーションを密にしてくれたおかげで、特別なクレームもなく、終始おだやかな環境で工事は進行していった。
●現場に通う施主
完成が楽しみな施主は連日現場を見学していく。オープンシステムの醍醐味は、職人さんと施主とのオープンな対話がしやすいところである。同世代の施主と職人さん、一気に打ち解けあい、お互いの仕事を尊重しあう。施主もいわば料理職人。左官屋さんの若い弟子を叱るシーンなどに自分の修行時代、チーフ時代の出来事を投影しながら、大変面白がって参加してくれた。
●プレオープニングイベント
正式オープンまでの1週間はプレオープンとして、関係者を招いてメニューの確認、オペレーションの確認等でオーナーシェフはてんてこまいであった。
その期間中、工事関係者全員を御招待頂き、盛大な完成パーティーを開催していただいた。
オープンシステムならではの光景であった。
その後、職人さん達も、ハレの日には好んで利用してくれている。そして、メディア告知の意味をかねて、我々の企画によりオープニングイベントを行った。
各種マスコミを御招待し、ベリーダンサーを迎えての魅惑的なイベント。大成功であった。
建築家がメディア告知やマーケティングまで含めて御協力させていただく。商業デザインにはそのような側面があるのである。オープン以後、テレビ・ラジオで取上げられるなど、オープニングイベントの効果はすぐ発揮された。
●1周年を迎えて
正式オープンの4月11日。各種メディアへの告知も上手くいき、初日から予約客で埋まってしまう人気ぶりであった。飲食店の激戦区である大分の都町において、コンセプト通り、大分の「子猫ちゃん」である若い女性層に支持をしていただき、予約なしではなかなか入れない人気店として活況を見せている。売り上げも順調に推移してきたようだ。本物の「子猫ちゃん」も餌をねだりにやってきており、地域猫の拠点としても機能しはじめている。途中、車椅子用の着脱可能なスロープの追加発注を受けた。簡易的なものであったので、我々の設計施工?という形で制作し、プレゼントさせていただいた。プロダクトデザインの前兆のようなものである。先般、1周年イベントとして、再びベリーダンサーを迎えての魅惑的な一夜がくりひろげられ、関係者一同で1周年を祝福した。
●総括
2月末から3月末までの約1ヶ月の工期。内装工事においては充分な工期であった。第1号でコミュニケーションのとれた職人さん達との円滑なコラボレーション。アトリエ・ラッツの担当である安東歩にとって、初めてのオープンシステムであった。リフォーム会社での1年間の勤務経験はあるものの、ほぼ1年生。途中で何度も泣き、そして奮闘してもらった。泣くと強いタイプである。
我々のオープンシステム第3号は、第1、2号に引き続き、JCDデザイン賞に入選するなど、多数の受賞を得た。香港の建築誌を筆頭とし、メディア掲載も多く、各種出展も多数であった。つい先日、「デザイナーズコンパクトショップBEST100」に選出される快挙がり、その成果を確実なものとする事ができた。以降、商業デザインの仕事が順調に増加しつつある。我々に商業デザインの新たな扉を開いてくれた作品となった。
●実績という重み
第1号が完成し、2号3号の工事期間中、とあるクライアント御夫婦が事務所を訪ねてきた。
ハウスメーカーとの家づくりを進めていた状況であるが、どうも理想の形には結びつかず、価格設定にも透明性がない状況であった。たまたまオープンネットのホームページに出会い、オープンシステムという仕組みに共感を覚える。大分の会員を検索した結果、我々のホームページにたどり着いた。そこで、我々の第1号の資料をお見せし、オープンシステムの醍醐味をご説明する。
すると、ハウスメーカーに違約金を払う覚悟でキャンセルをし、我々との家づくりをスタートする決断をしていただいた。
我々の建築テイストと分離発注という発注方式が完全にシンクロした瞬間であった。3つの実績があって初めてクライアントに不安感を抱かせる事なくアピールできた事例といっていい。分離発注とデザインのバランス。「価格の見えるグッドデザイン」が真価を発揮し始めた瞬間であった。(続く)
●データ
■#008 Restaurant Carmine Minina
所在地/大分県大分市都町
主要用途/レストラン
■設計
設計・監理/株式会社アトリエ・ラッツ一級建築士事務所
■施工
オープンシステム(分離発注方式)
CM/株式会社アトリエ・ラッツ一級建築士事務所CM部
大工工事/小林大工
左官・塗装工事/東青塗工
左官工事/黒田建商
木製建具工事/瑞木産業
内装工事/インテリアS
電気設備工事/大日電気工事
機械設備工事/釜a光熱設工業
厨房機器/ホシザキ南九州(株)
美装工事/富永産業
廃材処理/九州環境管理(株)
家具/無印良品
サイン/(有)中央公告
■規模
階数/地上2階
延床面積/48.96u(14.81坪)
定員数/19名
■工程
設計期間/2004年11月〜2005年02月
工事期間/2005年02月〜2005年03月
■内部仕上
ホール
床/アイアンウッドt=20
壁・天井/Rコンパネt=12+寒冷紗総パテ扱きの上AEP塗装
一部:コンパネt=12+珪藻土左官仕上
厨房
床/長尺シートt=2.0
壁/コンパネt=12+汚れ防止クロス
天井/石膏ボードt=9.5+汚れ防止クロス
トイレ
床/長尺シートt=2.0
壁/コンパネt=12+珪藻土左官仕上
天井/石膏ボードt=9.5+珪藻土左官仕上
■設備システム
空調 冷暖房方式/エアコン
給排水 給水方式/上水道直結
排水方式/公共下水
給湯方式/ガス給湯
■主な使用機器
衛生機器/TOTO・INAX
浴槽/TOTO
厨房機器/ホシザキ
照明/松下電工
■コスト
建築本体工費 510万円(税込)
坪単価 34.4万円/坪
(建築本体工事/施工床)
●受賞・ノミネート
グッドデザインアワード2005「ノミネート」(ECO-CUBE)
JCDデザインアワード2005「入選」受賞
第1回OSデザイン賞「入選」受賞
デザイナーズコンパクトショップBEST100「受賞」
●掲載・出版
Architectural Tecnology & Design 2006.01(香港・雑誌、4P)
年鑑日本の空間デザイン(香港・書籍、1P)
夜店 night shop(香港・書籍、4P)
現代日本の建築vol.2(日本・書籍、2P)
デザイナーズコンパクトショップ(日本・書籍・2P)
●出展
「+A・大分の建築家展」(大分、2006.03.26-04.02)
「第3回未来をのぞく住宅展」(大分、2006.06.02-04)
「第2回未来をのぞく住宅展」(北九州、2006.07.08-09)
GDP2005(東京ビッグサイト、2005.08.28-30)
「+A・大分の建築家巡回展」(中津、予定)
第5回未来をのぞく住宅展(山口、2006.09.16-18)
DATA
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古後 信二
(37歳)
(株)アトリエ・ラッツ一級建築士事務所 代表取締役
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■プロフィール
1969年 大分県玖珠町生まれ。
1992年 大分大学工学部建設工学科 卒業。
1994年 大分大学大学院 修了。(佐藤誠治建築・都市計画ゼミ)
1998年 アトリエ・ラッツ 設立。
2004年 四日市門前町まちづくり協議会顧問 就任。
2005年 有限会社アトリエ・ラッツ代表取締役 就任。
2006年 大分大学大学院非常勤講師 就任。
JIA九州支部大分会 幹事就任。
日本CM協会九州支部 幹事就任。
株式会社アトリエ・ラッツ代表取締役 就任。
所属:(社)日本建築家協会、(社)日本建築学会、
(社)日本商環境設計家協会、
オープンシステムネットワーク会議、日本CM協会。
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■連絡先
(株)アトリエ・ラッツ一級建築士事務所
大分県大分市上宗方1996番地の1 K-SOHO 101
TEL:
097-542-7430
FAX:
097-542-7430
E-mail:
rats@oct-net.ne.jp
URL:
http://www.open-net.jp/site/page/jimusho/japan/kyusyu/ooita/rats/
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