オープンシステム関連情報
各種メディアへの掲載、建物の受賞等、オープンシステムに関する情報です。
 

建築革命宣言!価格の見えるグッドデザイン(2)
  「CCI」 2006年6月号 OS#01「エコ・チューブ#02」/(株)アトリエ・ラッツ 代表取締役 古後 信二

CCI 2006年6月号


続 『建築革命宣言!』 〜オープンシステム/ピュアCMに挑む建築士たち〜

価格の見えるグッドデザイン

第2回 OS#01「エコ・チューブ#02」


寄稿
株式会社アトリエ・ラッツ 一級建築士事務所
代表取締役・最高経営責任者
古後 信二 氏
エコ・チューブ#02 外観

●エコ・チューブ#02

 「エコ・チューブ」シリーズは我々が半規格型住宅として開発し、2004年度のグッドデザインアワードに輝いたシステムである。

 2〜2.5間スパンのチューブ状の空間を自由に組み合わせてつくる。外張断熱などのパッシブデザイン手法を駆使し、健康に配慮した内装材を用いている。チューブ内のフレキシビリティが高く、ライフスタイルの変化に対応しやすい。

 今回ご紹介するのは、その第2弾。大分市に建設された専用住宅である。ひな壇状に造成された大分市中心部を一望できる敷地であり、地下あつかいとなる部分をRC造とし、上部に木造平屋のコートハウスを配置している。

●オープンシステムの採用

 高校時代からの同期である友人から設計依頼があった。ラグビー部で青春時代を謳歌した仲である。彼としては、発注方式については特に興味がなかったと思う。友人である私にやらせたい。そんな親心のようなものがあった。

 大分市において、オープンシステム事例はまだない時期であった。我々の実践への機運も高まってきていた時期である。施主の好意もあり、初めての取組みに御理解をいただいた。

 我々の初挑戦、全国のオープンシステム先駆者達からのあたたかい御指導のもと、ひとつづつ障害をクリアしていく事になる。

●専門工事会社のネットワーク構築

 まずは、専門工事会社さんの開拓からスタートである。

 一括発注で御縁のあった専門工事会社さんがまっさきに思いつくが、元請との関係性もあり、気安く声は掛けられない。一部の方はオープンシステムに興味を持ってくれていたので、その方をきっかけに、やる気のある業者さんを紹介してもらった。とはいえ、難航した。

 各業者さんと直接面談する。各業種に2〜3社。

 見積りを提示してもらうが、工務店に提示するネット表記のような見積りが相次ぐ。どうしても原価表記に抵抗があるようであった。中心となる大工工事の選定が難航する。今後の事をふまえ、できるだけ若くやる気のある職人さんを中心としてみた。

●材工分離

 第一号である以上、材と工もできうるかぎり分離させたいという欲があった。オープンネット経由で一部の資材は入手できた。地場の資材卸会社に協力依頼をするが、既存の流通に影響するため、断られた。

 やや遠方の資材卸と関係性が構築でき、ほとんどの資材をそこから納入する事となったが、運搬費がかかる。

 運搬費を最小限にするため、発注と納入、現場の受入体制のバランスをとる事となった。

 各種の小物部材については、ホームセンター、金物店などから調達する事にした。

 運搬に際して、当時は軽トラックなどをレンタカーで調達していた。最近では、サニートラックを社用車として導入し、小回りがきくようになっている。 

 大工さんの釘などの一般金物も支給品とした。

●銀行融資

 銀行融資、窓口の担当者もオープンシステムは初めて。

 「価格の見える家づくり」の本を贈呈し、懇切丁寧に説明を試みた。担当者レベルでは、「いい家づくりですね」となるが、本部レベルにおいては、手続きのややこしさから、請負金額とりまとめ書を提示するよう要求される。完成後にも、すべての領収書の提示を要求された。
 
エコ・チューブ#02 リビング・ダイニング

●請負契約

 見積書も揃い、業者選定も終了。我々の事務所において先行する業者さんを優先的に集まってもらい、契約調印。施主も緊張と同時に喜びを感じた瞬間である。

●地鎮祭

 条件がそろい、地鎮祭を迎えた。施主家族をむかえ、手作りの地鎮祭である。縄張りをおこない、祭壇などのセッティングも我々が行う。近隣挨拶も我々が中心となって執り行った。

●基礎工事の分離発注

 混構造であったため、一般的な基礎工事業者では難易度があったため、また、分離の度合いを高めたかった事もあり、土工事・コンクリート工事、型枠工事、鉄筋工事の3社に分離した。

 逆ベタ基礎形式であるため、埋設配管と立ち上がり位置の精度が求められた。

 また、一発仕上げのため、スラブ専門の左官職人。

●上棟

 基礎工事も終わり、いよいよ大工さんの登場である。お願いしたのは、30歳の若い大工さん。あえて、若い大工さんにお願いしたかった。腕はよかった。
クレーンも分離して導入。

●台風一過

 台風は数回、かなりの大型がきた。これまで、台風が来ても現場監督が対処していたため、さほど心配しなかったが、分離発注では違う。大工さんといっしょに、ブルーシートかけを何度もおこなった。大型のホッチキスも自分用を用意したくらいである。

 仮設トイレも台風養生をしていたにもかかわらず、転倒。職人さんと皆で修復する。
天気予報とにらめっこする毎日であった。

●現場変更の対応

 施主から内部の造作工事において変更依頼があった。

●竣工間際のお祭り騒ぎ

 年内の竣工目標。オープンシステムは工期を請け負う方式ではないが、人情として、新居で新年をむかえてほしい。大工工事の遅れと台風の直撃のため、最終工程は混乱していた。

●総括

 8月末から12月末までの約4ヶ月の工期。標準的な工期といえる。まさに、体当たりのような感覚であった。

 竣工後に施主主催で開催された懇親会においては、全業種の職人さんが参加。総勢30名で健闘をたたえあった。

 施主自ら職人さん各自にお酌をしながら語り合っている姿には感動があった。

 我々のオープンシステム第1号は、ОSデザイン賞「銅賞」を頂く。その他多数の受賞を得た。
メディア掲載も多く、各種出展も多数であった。

●ネクストステージの突入

 第一号の工事期間中から、我々にとって大分県外での始めての物件が進行していた。福岡県のため、工務店一括発注を前提としていたのだが、工務店とは縁がない。知人の紹介してくれた工務店数社に見積り依頼をするが、敬遠されたという事と超ローコストのため、金額があわない。一番低価格な工務店に我々と一緒にコストダウンを図っていく意思の有無を確認したところ、「絶対無理、うまみがない、やりたくない」と突き放されてしまう。

 そこで、遠隔地におけるオープンシステムの扉を開く決意を行った瞬間であった。(続く)
 
エコ・チューブ#02 リビング・ホール

●データ
■ECO-TUBE#02
 所在地/大分市季の坂
 主要用途/専用住宅
 家族構成/夫婦、子供1人
■設計
 設計・監理/株式会社アトリエ・ラッツ一級建築士事務所
■施工
 オープンシステム(分離発注方式)
CM/株式会社アトリエ・ラッツ一級建築士事務所CM室
 仮説工事/二豊ウイング
土・コンクリート工事/めの建設
 型枠工事/曽我工業
 鉄筋工事/佐藤鉄筋
 大工工事/小林大工
クレーン工事/修栄重機工業
板金工事/立川板金
 塗装工事/東青塗工
 金属製建具・ガラス工事/新日軽九州支店
 木製建具工事/瑞木産業
 鉄骨工事/神崎スチール工業
 デッキ工事/スタンス
 左官工事/黒田建商
 外構工事/ランドワークス
 電気工事/大日電気工事
 給排水衛生・換気・空調設備工事/和光熱設工業
 美装工事/富永産業
 ゴミ処理/九州環境管理
■構造・構法
 構造規模/在来木造
 基礎/ベタ基礎+擁壁
■規模
 階数/地下1階・地上1階
 最高の高さ/4.63m
 敷地面積/204.56u
 建築面積/116.79u(建ペイ率57.07%許容70%)
 延床面積/150.71u(容積率61.52%許容200%)
(容積率対象延床面積/125.86u)
   地階/33.12u
   1階/117.56u
 施工床面積/180.94u(54.73坪)
■工程
 設計期間/2004年02月〜2004年07月
 工事期間/2004年08月〜2004年12月
■敷地条件
 用途地域等/第1種中高層住居専用地域
       防火指定無
 道路幅員/市道志手8号線・幅員6m・接道15.22m
      駐車台数2台
■外部仕上
 屋根/ガルバリウム鋼板縦ハゼ葺
 外壁/ガルバリウム鋼板大波横張
    ガルバリウム鋼板小波横張
 開口部/アルミサッシュ(新日軽)
 外構/砂利敷き
■内部仕上
 1階
  床/ナラ無垢フローリングt=15+塗装
壁/石膏ボードt=12.5+珪藻土左官仕上
天井/石膏ボードt=9.5+珪藻土左官仕上
■設備システム
 空調  冷暖房方式/エアコン
 給排水 給水方式/上水道直結
     排水方式/公共下水
     給湯方式/電気温水器
■主な使用機器
 衛生機器/TOTO
 浴槽/TOTO
 厨房機器/TOTO
 照明/無印良品

●受賞・ノミネート
グッドデザインアワード「受賞」(ECO-TUBE)
第1回OSデザイン賞「銅賞」受賞
第20回豊の国木造建築賞「大分県建築士会賞」受賞
AWDA2006「サスティナブル木造住宅提案賞」受賞
オール電化住宅オブザイヤー2005「最優秀賞」受賞

●掲載・出版
新しい住まいの設計2005.11号(日本・月刊、2P)
おおいたの住まい情報誌ワイズ2006(大分・年刊、2P)
ガレージのある家6(日本・季刊、6P)
大分の建築家の本vol.2(大分・書籍、1P)
エコ&ナチュラルに暮らせる家
現代日本の建築vol.2(日本・書籍、2P)
ニューハウス7月号(日本・月刊、6P)
グッドデザインアワードイヤーブック2004-2005
ぷらざ2005.02号
朝日新聞2004.12.18号
ハロー大分(テレビ大分)
コンカ2006.02号
AWDA2006受賞作品集(予定)
第20回豊の国木造建築賞作品集

●出展
大分の建築家展(大分、2006.03.26-04.02)
第3回未来をのぞく住宅展(大分、2006.06.02-04)
AWDA2006受賞作品展(リビングデザインセンター、2006.06.29-07.11)
現代日本の建築vol.2出版記念展(東京、予定)
JIA新人賞2006公開審査作品展(奈良、予定)
グッドデザインプレゼンテーション2004(東京)


DATA
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
古後 信二(37歳)
(株)アトリエ・ラッツ一級建築士事務所 代表取締役
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
■プロフィール
1969年  大分県玖珠町生まれ。
1992年  大分大学工学部建設工学科 卒業。
1994年  大分大学大学院 修了。(佐藤誠治建築・都市計画ゼミ)
1998年  アトリエ・ラッツ 設立。
2004年  四日市門前町まちづくり協議会顧問 就任。
2005年  有限会社アトリエ・ラッツ代表取締役 就任。
2006年  大分大学大学院非常勤講師 就任。
      JIA九州支部大分会 幹事就任。
      日本CM協会九州支部 幹事就任。
      株式会社アトリエ・ラッツ代表取締役 就任。

所属:(社)日本建築家協会、(社)日本建築学会、
    (社)日本商環境設計家協会、
    オープンシステムネットワーク会議、日本CM協会。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
■連絡先
(株)アトリエ・ラッツ一級建築士事務所
大分県大分市上宗方1996番地の1 K-SOHO 101

TEL:097-542-7430
FAX:097-542-7430
E-mail:rats@oct-net.ne.jp
URL:http://www.open-net.jp/site/page/jimusho/japan/kyusyu/ooita/rats/
 
【過去のCCI 】 2005年2月号2005年3月号2005年4月号2005年5月号2005年6月号2005年7月号2005年8月号2005年9月号2005年10月号2005年11月号2005年12月号2006年1月号2006年2月号2006年3月号2006年4月号2006年5月号
★ご案内★ CCI とは・・・「設計・デザインに携わる方の建築系製品情報誌」です。
CCI は、以下のHPで登録することができます。
  http://www.cosmogroup.co.jp/ (コスモ・リバティー社HP)
  発行媒体のご案内 ⇒ 『CCI』 ⇒ 購読申し込みのご案内
CCI は、全国の建築設計事務所に無料で送っています。
CCI は、現在、約2万2千部の発行部数を誇っています。
CCI 購読申し込み

Counter:06412


『Index』から選択し、『Go!』をクリックして下さい。
オープンネット株式会社