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「CCI」 2005年12月号・・・本間総合計画的オープンシステム
オープンシステムと出会って、5年目。試行錯誤を繰り返して、・・・/(株)本間総合計画 代表取締役 本間 貴史 氏
続 『建築革命宣言!』 〜オープンシステム/ピュアCMに挑む建築士たち〜
本間総合計画的オープンシステム
オープンシステムと出会って、5年目。
試行錯誤を繰り返して、最近、たどり着いた私のやり方がある。
しかしこれは、到達点ではなく、あくまでも通過点に過ぎない。
寄稿
(株)本間総合計画 代表取締役
本間 貴史 氏
●分離発注はコストコントロールが大切
「それは無理、出来ません。」工務店のこの言葉がきっかけになって、私の分離発注への挑戦は始まった。分離発注は、コストコントロールの良し悪しでその結果が大きく変わる。つまりCMrの力量に大きく左右される方法なのだ。試行錯誤を繰り返し、最近たどり着いた私の進め方を紹介しよう。但し、未だ通過点であることを前置きして・・・。
私は、まず設計着手時に予算配分表を作成する。あらかじめ予算配分を明文化しておくことは、コスト上のトラブルを防ぐコツだと考えている。また、予算オーバーの可能性があることを建築主に了解してもらった上で、建築主の要望を出来る限り取り入れた形で設計を進めていく。そして実施設計の後半に過去の実績により把握している単価から予算書を作成する。もしも予算を越えた場合、減額案を数十項目に渡り作成し、どの減額案にするか建築主に選択してもらう。ここで承認された項目を実施設計に反映し、同時に予算書も変更訂正する。この予算書をもとに見積もりを取ることになる。分離発注は、工種ごとに複数の業者を募って見積もり依頼する。たとえば、木造住宅で約20工種とすれば、単純に40業者以上に見積もり依頼することになる。見積もり参加案内は、オープンシステムの業者バンク加入業者の他に知っている業者にも出来るだけ声をかけている。競争原理を働かせる為には各工種あたり3社以上で競わせることが有効だと考えるからである。そして、工事着工の約6週間前にその案件に見積もり参加する全業者さんを一斉に集め、発注説明会を開催する。
発注説明会では、あらかじめこちらで積算した項目の参考数量を記入した金額抜きの概算予算書を各業者さんに渡している。Excelデータで渡すことも多くなった。基本的に業者さんは単価を記入(入力)するのみである。こうすることで、各社から出た単価を簡単に比較することが可能になるし、記入ミスのチェックも容易である。
更に工事項目を細分化することでコストの適正化を図っている。同じ工種でも例えば洗面化粧台はA業者が安く、ユニットバスはB業者の方が安い見積もりが提出された場合、洗面化粧台とユニットバスを分けて発注すれば、よりコストが下がる。細分化することで工事項目は40項目近くに及ぶこともある。こうして徴収された見積もりから、見積もり比較表を作成し、それを元に建築主と一緒に業者を決めていく。
見積もり集計の結果、予算を大きく下回ることもある。そのような場合は、一度減額案で諦めた項目を復活させることも多い。建築主の顔がほころぶ瞬間である。
このように出来る限り競争原理を働かせて行う分離発注だが、唯一競争させない工種がある。それは大工工事である。木造住宅の建築において、大工の棟梁の腕が最も重要な位置を占めるのは云うまでもない。
また、木造住宅の場合、木工事を材・工分離しないと、分離発注の醍醐味は出難い為、大工は手間のみの発注となる。木材建材は金額も大きいので競争原理が働きやすいからである。
●バックマージンは如何ほどに?
建築業界にはダークな部分が多すぎる。建築主が解らないのをいいことに、様々な行為が行われる。それを当たり前として捉えている人間の如何に多いことか。
実際に工事に参加したことのある業者さんなら分離発注がどういうものなのか理解していると思うが、毎回初めて参加する業者さんもいる。その方達にはシステムの説明と共に私はいつも云っていることがある。「この分離発注は施主と皆さん(専門工事業者)、そして我々設計者が三位一体となって成り立つものなのです。三者がきちんと理解してはじめてスタート出来るのです。分離発注で元請けになるのは皆さんなのですから、ご自分の報酬はご自分で決めてもらいます。私は、皆さんが出された金額に対してネゴ交渉はしません。またバックマージンを要求することなど一切ありません。どうか安心して、そして元請として責任をとれる金額を入れて下さい。」
それでも最初は、半信半疑でふかした金額を入れてくる業者さんもいた。落札できなかった業者さんに対して見積結果通知を出しているが、そこで自分の金額と落札業者さんの大まかな金額の差を知ることで、改めてこのシステムの本当の意味を知るようだ。この通知書を参考にして、過去に何度も落札出来なかった業者さんが新たに落札する例も出てきている。
ところが、ある解体工事を伴う案件でのことである。競争見積もりにより解体業者が決まり、建築主との工事契約を直前にして業者さんが云った言葉に私は唖然とした。「見積もりの金額でそのまま契約しても良いのですか?バックマージンは如何ほどで考えれば良いでしょう?3%、いや5%ですか?」何も解っていなかったのだ。こんなにもその行為が浸透しているこの業界に腹立たしさを覚えた。私は未だかつてバックマージンなど貰ったことなどない!だって、それは犯罪同様なのだから・・・。「バックなんてありませんよ。そんなことに使う余裕があるなら、工事金額に反映させて下さい。」そう私が云っても半信半疑の様相であった。
もっともっと業者さんに分離発注を理解してもらう必要がある。こんな汚れた世界にどっぷり浸かってしまった業者さん達に真っ当な金額で勝負できる方法があるんだと。
●リスク調整費(コンティンジェンシー)
工事中は予期せぬ出費が発生することがある。その為に通常は工事費の3%程度の予備費をみているのだが、時に、明らかに赤字となる金額で落札する業者さんが存在する場合もあり、その状況に応じて多目に確保することもある。
だが、この「予備費」という呼び方が何だかしっくりこない。予備というと意味合いが微妙に違うのではないか?CM用語ではコンティンジェンシーというが建築主に説明するのに横文字はどうも伝えにくい。そこで私は数年前から、隙間リスク等を調整する為の費用なのだから、『リスク調整費』と呼んでいる。
以前は、建築主からリスク調整費を現金でお預かりすることもあった。または、建築主がリスク調整費用口座を準備し、キャッシュカードをこちらでお預かりしたこともあった。もちろん預かり証の授受は必須である。しかし、現物を預かっていること自体リスクのようである。
現在は、リスク調整費用口座を当事務所で作って建築主に振り込んでもらうかたちをとっている。但し、そこで必要なのが銀行への説明である。銀行はこの口座が誰のものなのか聞いてくる。「○○の家 新築工事 CMC 代表 本間貴史」なんていう名義だからである。ちなみに、CMCとはコンストラクションマネジメントクラブの略のこと。リスク調整費用口座を作るたびに銀行に説明する。
「まず、この工事は分離発注で施工されます。ここには、工務店が存在しません。お客様(建築主)が直接専門工事業者ひとりひとりと契約するシステムなのです。そして、我々設計事務所はお客様をサポートする立場なのです。また、これは弊社の口座ではありません。お客様のものです。口座の管理上、名義の代表は本間貴史になっておりますが、緊急出費に対応する為の資金としてお客様(建築主)から一時的にお預かりするものです。現場で突然必要になったものの調達の為に、ホームセンターに走ることもままあります。その為にお客様にいちいちお金を出して下さいとは云えません。遠方にお住まいの方なら尚の事です。竣工引渡し時にこの口座は解約し、通帳と共にお客様にお返しします。明細が通帳に記帳され、どのように使用したかお解り頂けるので、このようなかたちをとっています。」
果たして、どこまで理解されたかは不明だが、銀行側は一応納得する。名義をどうするべきか今後も再考の余地があると思う。このリスク調整費の残金であるが、竣工引渡し時に建築主に、アフターメンテナンス費用として残しておくことを勧めながらお返しするようにしている。
●工務店を外すということ
しかしながらこの分離発注を皆に理解してもらうにはまだまだ時間がかかるようだ。時折、「受注の為に分理発注(オープンシステム)やってるんでしょう?」とか「(オープンシステムは)デザイン出来ない人が集まってる団体だよね。」等と平気で云う建築家がいる。心外である。または「建築家たるもの、施工に手を出すとは嘆かわしい。」という声も聞かれる(正確には施工をしている訳ではないのだが)。そのようなことを云う人に、私は問いたい。
「あなたは、今のやり方に満足しているのですか?」
純粋芸術ではない建築には施主の存在が必ずあり、常に工期や予算に縛られる。そのようななかでコストコントロールが自ら出来て、職人さんにダイレクトに思いを伝えることが出来る方法が、分離発注の他にあるだろうか?考えてみてもらいたい。施主と考える人(設計者)と造る人(職人さん)だけのシンプルな関係なのだ。心から建築を愛する設計者であればこそ、分離発注の醍醐味を理解するのに時間はかからないはずである。
また、分離発注の場合、工務店を外すのだから、設計者としての工事監理のウエイトが当然大きくなる。そんなことをしていると、施工しやすいディテールにしてしまったり、デザイン性が落ちていくのではないかと懸念を示す人もいるが、そうではない。分離発注によって、以前よりも詳しくコスト構成を知ることが出来た。それは、設計においてもデザインの可能性を広げるきっかけになっている。何よりも怖がらないで設計出来るようになったと思う。
現場で職人さん達と直接対話して造っていくプロセスは本当に楽しい。それは、我々も『設計職人』であるからなのかもしれない。彼等の専門家意識も決定権も何もかも奪い取っていった工務店はここに存在しない。『職人気質』などという言葉を耳にすることが少なくなったこの時代、こんなやり方があってもいいのではないか。そう、私は思うのだが・・・。
DATA
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本間 貴史
(39歳)
竃{間総合計画 代表取締役
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■プロフィール
1966年 新潟県村上市生まれ。
1987年 国立宮城高専建築学科卒業。
針生承一建築研究所入社。
1990年 現事務所設立。
1996年〜 東北文化学園専門学校建築デザイン科 非常勤講師。
資格:一級建築士。一級建築施工管理技士。JIA登録建築家。
所属:日本建築学会正会員。
日本建築家協会正会員。
オープンシステムネットワーク会議正会員。
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■連絡先
竃{間総合計画
宮城県仙台市泉区八乙女中央3-10-8-311
TEL:
022-371-6616
FAX:
022-371-6615
E-mail:
info@hom-ma.co.jp
URL:
http://www.open-net.jp/site/page/jimusho/japan/touhoku/miyagi/honma/
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