オープンシステム関連情報
各種メディアへの掲載、建物の受賞等、オープンシステムに関する情報です。
 

「CCI」 2005年11月号・・・オープンシステムとの出会い
  (株)本間総合計画 代表取締役 本間 貴史 氏

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続 『建築革命宣言!』 〜オープンシステム/ピュアCMに挑む建築士たち〜

オープンシステムとの出会い

  建築を造りたい・・・究極は自分の手で造りたい・・・『工務店』に頼ることなく・・・。
  『先生』なんて呼ばれなくていい。ただ、職人さん達とワイワイ造りたい。
  オープンシステムは、そんな建築家による分離発注なのである。


寄稿
(株)本間総合計画 代表取締役
本間 貴史 氏

●現場にメッセンジャーボーイは要らない

 ずっと気になっていた。雑誌で目にするたびに気になる存在だった。2000年の初冬、その思いは決定的なものになる。『オープンシステムネットワーク会議』・・・そのWEBサイトに創設者の山中省吾氏の思いが掲載されていた。全て読み終えるのに8時間はかかるほど膨大な情報量だった。しかし、そんな時間の経過など気づかないくらい、私はその世界に引き込まれた。やがて、こみ上げてくるものがあった。。。私がずっと抱えてきた思いを、彼は実現していたからだ。

 『オープンシステム』この建築家による分離発注システムの創設者、山中省吾氏は設計畑のみを歩んできた人間だった。そんな彼が何故、この工務店抜きの分離発注を始めたのか?・・・答えは簡単だった。工務店が「出来ない」と云ったから。

 私にも似たような経験があった。ある飲食店の現場でのことである。設計仕様では、内装の木部をOSCL(オイルステン・クリアラッカー)としていたが、ある日私が現場に行くと塗装業者がOP(オイルペイント)を塗っていた。私に何の相談も無しに・・・。工務店の現場監督へ事情を聞くと塗装工事とクロス工事の工程が逆転し、クロスの糊が、内装木部に付着してしまった為にOSCLではムラが生じたと言う。短工期の為、無断でOPに変更したらしい・・・。サンドペーパーでこすれば、付着した糊はすぐとれるのではないかと聞くと、「ちょっと聞いてきます」と監督。数分後、戻ってきた彼から出てきた言葉は,こうである。「塗装業者が無理だと云ってます」本当に無理なのだろうか・・・。私は作業着に着替えて現場に立った。サンドペーパーで木部に付着した糊を落としてからOSCLを塗ってみた。

 何のことはない。。。ムラが消えたではないか!

 そんな私の姿を見ていた監督と塗装業者も慌ててサンドペーパーを持ってきて、私と同じ作業を始めたのである。

 幸い、OPは5分の1くらいの段階でストップした為、工期内で当初の設計仕様どおり木目を生かしたOSCLにすることが出来た。

 私は、この現場でつくづく現場監督の存在に疑問を抱いてしまった。設計者の声、業者の声をただ伝えるだけのメッセンジャーボーイだとしたら、そこに何の意味があるのだろう。

 もしも、設計者と職人さんだけで造っていたとしたら、OPを塗るなんて指示など出さなかった筈だし、もっとスムーズに現場が進んでいたに違いない。

●設計者であるが故の究極の解答

 私は設計者である。構想は出来るが工事は出来ない。もしも昔の大工の棟梁のように、自分で設計し自分で造り上げることが出来たらとても楽しいに違いない。

 今まで、現場監督が間に挟まることで、設計意図が伝わらず意に反した結果になってしまうことが往々にしてあって、何度も悔しい思いをしてきた。それは、少なくともこの現場だけではなかった。自分の考えたことをもっとダイレクトに、そして正確に造り手に伝える方法はないものか。。。?

 そんな思いを抱き続けてきた私にとって、分離発注(オープンシステム)はひとつの解答であった。設計者であるが故の究極の解答である。そして、これは極限のストイックなあり方(生き方)ではないだろうか・・・。工務店に自らの設計ミスを埋めてもらうといった設計者としての逃げは通用しない。それ相応の覚悟が必要だった。

 私はその究極の解答をこの手につかむべく、この団体への入会を決意した。それはちょうど世紀が替わる頃と重なり、私は21世紀最初の正会員となった。

●準備期間

 オープンシステムは、いわゆるフランチャイズではない。現在は研修制度も整備されつつあるが、以前はほとんど無かったので、入会したからといってノウハウを伝授されるものでもなかった。分離発注をひたすら研究する勉強会、といったほうが正しいのかもしれないが、他のCM団体と異なるのは机上の論理ではなく、実績が豊富だということである。累計1400件を越える実績があり今後の課題を含めた生々しい話が聞ける。私は各地の勉強会に参加しながら実践への準備を進めていった。しかし分離発注を本当に自分にも実践出来るのか、不安を抱えていたのも事実である。

 入会したものの工務店一括発注方式から抜け出せないでいたある日、ある木造住宅の案件がどうしても予算オーバーしてしまい途方に暮れていた。減額項目を洗い出しては再考する繰り返し。工務店の出す見積は、もはや限界であった。ふと、アルミサッシュを分離したら・・・という思いが脳裏を横切った。

 早速、販社に問い合わせてみる。中間マージンが無いのだから、ある程度は下回るだろうと予測していたが、出てきた見積は何と30万円も下回っていた。その後の案件でも工務店一括発注する中で、徐々に分離工種を増やしてみた。部分的に分離発注を行うことで私は実感した。これはおもしろい。

 しかしながら一番懸念していたことがあった。私は設計畑のみを歩いてきた人間だ。工務店のいない現場で果たして的確に機能する工程表を作れるのか?業者さんへの指示、微妙な舵取りをうまくやれるのか?このままでは分離発注に取り組んだとしても、第一号になる建築主に迷惑を掛けてしまうのではないか。。。

 そんな矢先、ある工務店が倒産したことを耳にする。私が一番信頼していた現場監督がその工務店にいたのだ。彼は監督歴20年の経験を持つベテランであり、設計者の意図を正確に汲み取り、設計図以上の建築を造り上げる人間だった。そして私は、彼の人間性を高く評価していた。その彼が、ある日私の事務所を訪ねてきて云った。「何か私にお手伝いできることはありませんか?」これは運命なのか?いてもたってもいられず、私はその現場監督を監理部長として事務所に招き入れた。私は確信した。これでより精度の高い分離発注が出来るかもしれない・・・と。

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●業者さんへの説明

 私の分離発注第一号は設計段階でも難解な案件であったが、紆余曲折を繰り返し、業者見積りを行うところまでこぎつけた。しかしここ宮城県は、このシステムが浸透するには、まだ時期尚早であった。見積に参加する業者さん1社1社に時間をかけて分離発注の説明をする必要があった。業者さんが元請けになること、施主と直接契約であること。。。ひとりひとりに口酸っぱく説明した。

 下請けに慣れ、この業界のダークな部分を見届けてきた業者さん達である。バックマージンについて聞いてくる人もいた。そんなものはないと説明しても、果たしてどれだけ理解してもらえただろうか?設計事務所の人間が云うこと、工務店の監督だった人間が云うこと、業者さんの立場で見れば眉唾に聞こえてもおかしくないだろう。

 しかしいざ、蓋を開けてみるとその不安は一蹴された。監督歴20年の監理部長は云った。「私の20年は何だったんだ?見たことのない金額が入っている。。。」所内の概算見積よりも、また事前にとっていたどの工務店の見積よりも、はるかに安い価格が並んでいたのである。このことは、おそらく私以上に彼の衝撃は、はかり知れないものであったに違いない。
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●洗礼を受けた調印式

 分離発注(オープンシステム)。これは、設計段階よりも業者選定と監理において、想像を絶する膨大な事務量をともなう。

 今でも忘れはしない、初めての調印式。ここで、私は洗礼を受けることになる。業者さんは契約に慣れていない為、契約書は我々が作るのであるが、約20社の契約書類を作るのに、初めてとはいえあまりにも手間取ってしまったのだ。とてもお粗末な事態だった。その日は、午前中に地鎮祭、午後から調印式(工事分割請負契約)の予定だった。しかし、数人のスタッフが徹夜したにも関わらず当日の朝の時点で契約書類が完成していなかったのである。後ろ髪引かれる思いで私はスタッフに書類の完成を指示し、地鎮祭に赴いたものの気が気ではなかった。

 午後、調印式の開始時刻になっても書類は会場に届かない。事務所に連絡してみる。完成していない。刻々と時間は過ぎてゆく。。。ついに私は「申し訳ありません!」と頭を下げた。建築主と業者さんの晴れの日をこんなかたちでぶち壊してしまった私は、本当に会わせる顔が無かった。

 結局、大幅に時間を遅らせて始まった調印式であったが、建築主はもとより業者さんにとっても、こんなお粗末な事態を見るのは初めてのことだったに違いない。今でこそ失敗談として振り返ることができるが、二度とこんなことをしてはいけないと心に誓った瞬間である。現在は、業務支援サイトの運用が始まっており、作業の効率化が図れる環境が整いつつある。
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●オープンシステムと出会って4年

 分離発注は施工手法のひとつに過ぎない。しかし、現代の日本の建設業界において、その意味は非常に大きいと思う。

 建設産業の構造が大きく変る昨今、我々は建築家としてどう向き合い、どういう位置付けで関わっていくべきなのか。かつてのように、どんな設計者でも「先生」ともてはやされる時代には戻らないだろう。デザインや監理のみをコストの裏づけも知らずに曖昧な状態で進めていくことの如何に頼りないことか。建築家はもっと積極的に時代の要請に応えていくべきなのではないか。建築業界のブラックボックスの解体をはじめ、伝統技術の伝承や専門工事業の職能の確立など、分離発注を通して出来ることは多い。何よりコストコントロールのツボがそこにあるのだから、建築家が取り組む意味は大きい。

 もちろん、工務店がいない分、設計者の責任が重くなるのは確かである。石橋を叩いて渡らず、重い腰を遅ればせながら上げるほうが利口なのかもしれない。他の誰かの経験談を、文献や講習会等で学ぶことも出来るだろう。自らのリスクを負わないことも可能である。しかし、私はこう考えている。こういう時代だからこそ「傍観者」ではなく常に時代の「当事者」であり続けたいと。たとえ、それがイバラの道であろうとも・・・である。
 
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DATA
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本間 貴史(39歳)
竃{間総合計画 代表取締役
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■プロフィール
1966年  新潟県村上市生まれ。
1987年  国立宮城高専建築学科卒業。
       針生承一建築研究所入社。
1990年  現事務所設立。
1996年〜 東北文化学園専門学校建築デザイン科 非常勤講師。
資格:一級建築士。一級建築施工管理技士。JIA登録建築家。
所属:日本建築学会正会員。
    日本建築家協会正会員。
    オープンシステムネットワーク会議正会員。
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■連絡先
竃{間総合計画
宮城県仙台市泉区八乙女中央3-10-8-311

TEL:022-371-6616
FAX:022-371-6615
E-mail:info@hom-ma.co.jp
URL:http://www.open-net.jp/site/page/jimusho/japan/touhoku/miyagi/honma/
 
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