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「CCI」 2005年8月号・・・建築士の卵とのコラボレーション物件 D
  いよいよ大改修工事スタート!!/鰍ンずほ建築事務所 所長 山田 雄一 氏

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続 『建築革命宣言!』 〜オープンシステム/ピュアCMに挑む建築士たち〜

建築士の卵とのコラボレーション物件 D

いよいよ大改修工事スタート!!


寄稿
鰍ンずほ建築事務所 所長
山田 雄一 氏
 前号では、「積算業務、専門工事業者との契約会」について述べた。今回は、いよいよ工事がスタートする。分離発注の大改修の現場で、高専生と、どう接し、どう進めたか等についての話をしていきたいと思う。今回は、施工の流れが主となるので、写真が多くなることをお許し願いたい。

●工事スタート

 まず、既存の建物が建っているので地鎮祭をするわけでもない。Hさんと相談して、大工さん、基礎屋さん、材木屋さん等、主要な専門工事業者に現場に集まってもらい、皆で安全を祈願した。

 まず、コンクリートの補強壁の基礎からスタートし、次に外部足場の組立をした。コンクリート補強壁に障害となる既存の外壁等を、大工さんに解体してもらいながら進めていった。

 大工さんには、建物の傾きを多少直してもらいながら、既存の外壁の継ぎ足してある筋交い等を入れ替えてもらった。四隅のコンクリートの補強壁も同時に進めていった。外壁の胴縁を取り外し、内部側は柱と筋交いの内部に型枠をはめ込む事になる。型枠をはめ込んでしまえば、コンクリートを打設するまでの剛性を期待できるが、4箇所一度に、胴縁を解体すると建物が倒壊する危険が考えられるので、一箇所ずつ胴縁を解体し、内部側の型枠をはめ込んでいった。

 先月号で書かせていただいたことだが、既存の合掌部の仕上げを先行して施工した。吹抜けにする前に、既存の2階床から内部足場を設置し、大工さん、塗装屋さんに仕上げてもらった。安全に作業することが出来たし、またコンクリート補強壁を構築している間に、大工さんに仕上げてもらったので、大工さんの空き時間がなくなり、連続して大工工事を進める事ができた。
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 外部では、補強コンクリート壁の1階部分の型枠が完成した。いよいよコンクリート打設である。学生さん、M先生、施主ご夫婦も参加してくれた。でも何をするのか?当事務所のスタッフも参加して、皆でコンクリート打設時に、型枠を木づちで叩くのだ。強固で綺麗なコンクリートとするために・・・。当然、皆には保険はかけてあるが、安全上の注意を説明し、叩き方のコツを教え、思いっきり叩いてもダメだということも説明した。しかし、一番力任せに叩いていたのは、M先生だったかも?・・・。

 2階部分のコンクリートも同じように打設した。このコンクリート補強壁の強度が出れば、建物が倒れることはないであろう。梅雨入り前、台風前にコンクリートを打設できたので、非常に満足であった。補強コンクリート壁といいつつも、建物の重要な外観の意匠でもあるので、気になるのは、その打ち上がり状態である。結果的には皆でがんばったので、とても綺麗な表面の外壁に仕上がった。

 自我自賛しても信憑性に欠けるので、以下に実際の出来事を紹介しよう。

 生コン会社の試験室の人が現場に来たとき、次のように言っていた。

 「すごく綺麗な打放しのコンクリートですね。この前、ある建設会社の打放しのコンクリート見たけど、それはそれは最悪でしたよ。この現場に勉強しに来るように監督さんに言っておきますよ。」

 生コンの試験室の人というのは、かなりの時間コンクリートの仕事をしてきて、様々な現場を見てきているはずであり、そのような人にここまで言われて、素直に嬉しかった。
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●いよいよ大きな吹抜けを・・・

 さて、四隅の補強コンクリート壁が出来上がり、1階、2階の柱や梁、筋交いの補強・交換等も終了し建物自体は強固なものになったので、いよいよ中央の大きな吹抜けを造る時期がやってきた。

 あまりに大きな既存の梁材なので、建物の中にレッカー車を入れ、梁材を吊りながら切断していくという工法とした。さすがに私もこのような経験は初めてであり、大工さんと入念に打合せしながら進めていった。吹抜けのために解体した後に、中央の4.5畳の和室の骨格をつくり、その和室と外壁部を梁でつなぎ、より強固な構造とした。

 話は変わるが、この建物がどれだけ頑丈になったかという実話の笑い話がある。以下に紹介する。

 大工さんは、3人〜4人で毎日仕事をしていたが自宅が遠いので、Hさんのご好意により近くの自分たちが昔住んでいた建物を、大工さんの宿舎として提供してくれた。

 ちょうど建物が補強コンクリート壁により、強固になったころ、台風シーズンとなった。昨年は台風銀座と言うくらいに台風が多いシーズンだった。しかし、予想通り建物はビクともしなかった。Hさんは大満足であった。

 さらに、結構大きな地震が、ある日の夜にきた。大工さんは宿舎があまりに揺れるので、宿舎から現場に皆で移動し、現場で一夜を過ごしたそうだ・・・。当然、建物は全く揺れなかった。(大工さんは感激していた。)これを聞いたHさんは、もっと満足した。

 外部も徐々に仕上がってきた。板張りと、モルタル下地吹付け仕上げが主であり、それに四隅の打放コンクリートが存在し、上手く調和されて外観を演出している。

 断熱材は、本誌6月号の「建築士の卵とのコラボレーションB」で説明した、羊毛断熱材を使用している。壁、天井、屋根、床、全てに、この羊毛断熱材「ウールブレス」を使用した。

 外部のモルタル下地の吹付け材は、設計では弾性リシンであった。しかし、左官屋さんが〈あること〉を提案してきた。「山田さん、この前の料亭の現場で使った、すごくいい材料が余っているのですが・・・。」私は早速、その料亭をこっそり見に行った。なかなかイメージ通りの色である。M先生、Hさんにも了解を得て、契約どおりの価格で、その塗料で吹付けてもらった。
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●学生の見学

 このように現場が進んでいく中、主要メンバーの学生さん達は、土曜、日曜などを主体に、現場に足を運んでくれ、一緒に打ち合わせに参加したりしてもらった。現場が進んでいる途中で、「このようなデザインに変えられませんか?」ということがあり、途中変更の際のお金の流れ、手戻りとは職人さんがどれだけ嫌がるか?等を説明したものだ。逆に言うと、出来上がったものを見てイメージと違う!とかいうレベルの話は、それだけ図面等に忠実に表せなかったということであり、自分の建築家としての想像力の無さを露呈していることだと私は思うのである。「先生」と呼ばれ、いい気になっている建築家の中には、平気で「イメージと違うから壊してやりなおしてくれ!」という人が稀にいるようだが、これがバブル全盛期であれば、ゼネコンや工務店もしぶしぶでもやり直したであろう。しかし、この不景気な現在、ましてや建築設計の責任範囲が広くなってきている現在では、徐々にそのようなことは難しくなってきていくであろうと思う。分離発注となれば、それ以上に我々CMrに課せられる責務は重大であろう。

 高専の学生さんは、何回も現場に見学にきてくれた。時には学校のバスで、大人数で来たこともある。皆、施主のHさんの話、私の話に耳を傾けてくれ、本当に真剣に聞いてくれた。

 たぶん、学校では教えてくれないことばかりだと思う。改修という現場の特性、オープンシステム(分離発注)という新しい建築の手法、自分達が少なからず図面などに携わっていること等。これら身をもって経験したことは、きっと、将来において何かしらの役に立つであろう、と私は信じる。

 CCI6月号で紹介した、Hさん思い出の品の格子であるが、中央の4.5畳の和室の照明として組み込んだ。この写真ではまだ完成していないが、4.5畳の和室の照明としつつも、この和室の上部が階段の踊り場であり、ステージみたいな感じにしてあるので、一部強化ガラスを床に組み込み、上部にも明かりが溢れ出る構造とした。建物の中の中央部、すなわちこの4.5畳の部屋を行燈(あんどん)のイメージと考えていたからだ。
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 同じく6月号で紹介した、吹抜けにしたため発生した大きな梁材の行方であるが、詳しくは次号で述べたいと思うが、事の成り行きを少しだけ紹介しよう。

 結果的に、合計4回はこの建物を現場の進捗に応じて見学に来ていただいた、オープンシステムの山中代表。確か、最初にこの現場を見に来られたときに、現場の外に置いてあった既存の梁材を見て、

 「山ちゃん、この材料面白いな!何か有効に使えないかな?そうだ!私だったらカウンターとか机に使うぞ!どうだろうか?山ちゃん!」

 この意見に私は、(さすが山中代表!いいヒントをくれるなー。)と思った。なぜなら、まさにその頃、既存の鉄骨3階建て住宅の1階部分車庫に、レストランを増改築するという物件を設計中だったからだ。詳しくは次号をお楽しみに・・・。


 次回9月号は、工事の後半の概要、また、捨てられるはずだった既存梁材が飲食店のカウンターに!OS仲間での大見学会、高専生とのバーベキュー大会等を紹介していきたいと思う。


DATA
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山田 雄一(38歳)
鰍ンずほ建築事務所 所長
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■プロフィール
1967年 石川県金沢市生まれ。
国立石川工業専門学校 建築学科卒業。
(社)石川県建築士会青年委員長、
建築士会東海北陸ブロック青年建築士協議会運営委員、
(社)日本建築士会連合会青年委員を歴任。
現在、(社)石川県建築士会青年委員会相談役、
まちづくり委員会副委員長。
(社)日本建築家協会正会員。
オープンシステムネットワーク全国会議北陸代表幹事。
石川工業高等専門学校建築学科同窓会「ほおづえ会」副会長。
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■連絡先
鰍ンずほ建築事務所
石川県金沢市諸江町中丁303

TEL:076-237-3286
FAX:076-238-9693
E-mail:mizuho@spacelan.ne.jp
URL:http://www.open-net.jp/site/page/jimusho/japan/hokuriku/ishikawa/mizuho/
 
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