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建築知識 11月号 めざせCMの達人〜第6回〜
めざせ
CM
の達人
住宅
コスト
大公開
文=御前 好史
(
みさき建築研究所
)
E
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パッシブソーラーを分離発注で取り入れた事例
■ソーラーシステムの効率が高い設計
分離発注方式は、施主にとってはコスト適正化にも有効な方法であるが、設計者にとっては知識や経験を拡げるのにかなり役立つものと確信している。
今回の事例では屋根集熱式パッシブソーラーシステムを導入した(図・写真1)。システム導入の際は、研修を受けた加盟工務店により施工するか、もしくは設計事務所が設計研修を受けて部材を購入し、一般工事業者が施工するという条件があつた。だが、加盟工務店にソーラーシステム設置工事のみを分離発注することが難しく、後者の方法とした。
システム導入時の断熱方法や開口部・屋根と外壁の仕様は設計研修時にシミュレーションを行い決定する。断熱について、外壁は20kg100mm厚、屋根の野地板側は32kg50mm厚2重張り、天井裏は20kglOOmm厚のグラスウールとし、サッシはすべてペアガラス+単体のアルミサッシ仕様(三協アルミニウム工業(※1))とした。なお、気密はソーラーシステムの屋根集熱部と基礎断熱部の通気個所を除いて、特別な配慮はしていない。また内部は、ソーラーシステムが全体に有効に働くよう、各部屋が吹抜けでつながる間取りとし、間仕切も極力少なくした。
このようなシステムを分離発注で初めて行う場合、工事区分を慎重に検討しても、予期せぬことが起きる。特に通気部分の煙試験(気密試験)の結果次第では、大工をはじめ、屋根、電気、給排水、防水、ダクトなど多岐にわたる工事に影響を与え、工程が後戻りする場合もある。
実際今回も、通気と接する屋根面の気密がうまくいかず、板金工事を一部やり直した(写莫2)。また、集熱のための強化ガラスは大型で、重いので、設置する際にその場にいた職人の協力を仰いだりした。
このように、ソーラーシステムなど初めてのシステムを導入する場合には各業者の協力が不可欠である。
■大工工事を材工別にする
私の事務所では、コストと工期に大きなウエートをかける大工工事は、それらのもつメリットを考え、極力材料と工事を分離している(050頁表)。材工分離はコスト適正化だけでなく、設計者の意図が現場を反映できる方法と考えている。
構造材と床下地の合板などはプレカット材(ハイビック(※2))を使用した。発注期限ギリギリまで打合せを重ねて納まりの矛盾を解決したり、設計の変更も行う。プレカットの納期は通常2〜3週間のため、変更がある場合でも基礎工事までに発注を行えば建て方に間に合わせることができる。また、構造材を露しにする場合は、材種や表面仕上げの確認や構造金物の納まりの詳細な指示など、プレカット図面に積極的にかかわる必要があろう。
下地材、ボード類は懇意にしている材木店に発注し、額縁や造作材、カウンターなど意匠に直接かかわる材料は別々の業者に依頼した。これらも、プレカットを多く取り入れている。額縁はすべて断面詳細図を起こして納まりを検討したうえで木拾いしている。カウンター材なども現場加工が少なく、納まりがよかった。したがって、発注する際には、材料の選定や納まりの十分な検討が必要となるが、それによって設計者の意図がディテールに直接反映される利点もある。
■施主施工の際は工期を十分にとる
分離発注方式では施主が施工にかかわることも多いが、その際は十分な打合せが必要で、コストダウンになるからと安易に参加を促すべきでないと思う。施主の技量やスケジュール、他業種の工期が十分にとられているかが問題となる。
今回は、内部壁の珪藻土塗りと、額縁と床フローリング(ウッドハート※3)の塗装を施主が行った。珪藻土は「北のやすらぎ」(日本システム機器※4)をオープンネット経由で購入した。これは、石膏ボードをGLボンドでボード全面にしごき、プライマーを塗った後、2度塗りする材料である。そのため、施工に苦労したが、塗り厚は5mm程度をとることができ、珪藻土の質感と性能を十分引き出せたと思う。しかし、天井は作業が難しく、結局左官業者にお願いした。なお、額縁は「オスモカラー」(日本オスモ※6)、床は油性塗料より乾燥が早く、施工性がよいドイツ製のアクア・クロウ社の水性塗料(シノダコーポレーション※7)を塗った。全体の工期は天候の影響で遅れ気味だったが、壁塗りも考慮して1ヵ月延長した。
■予備費は施主にしっかり説明する
分離発注方式では、予算のなかに予備費を計上する事務所が多い。工事費用の3〜5%をみておくのが一般的だ。これは積算で見落とした材料や工事など、不意の出費を余儀なくされるときに使う。注意したいのは、施主が希望した仕様変更によって生じる予算の枠ではないことだ。私も経験不足のせいか、打合せで追加予算の枠取りであると受け取られてしまい、結果仕様変更が多くなり、予算オーバーしてしまった経験がある。施主には仕様変更の可否を事前に十分説明しておかなければならないと痛感している。
※1 三協アルミニウム工業問合せ先:TEL0766-20-2251
※2 ハイビック問合せ先:TEL03-3521-6717
※3 ウッドハート問合せ先:TEL052-834-6881
※4 日本システム機器問合せ先TEL011-241-2631
※5 オープンネットホームページ:http://www.open-net/
※6 日本オスモ問合せ先:TEL0794-72-2001
※7 シノダコーポレーション問合せ先:TEL052-824-0771
CM達人column
専門工事会社への見積りと選定(1)
文:山中省吾
住宅版CM/分離発注の現場は、何が起こるか分からない。事例ごとで専門工事会社が変わるからだ。極め付きは、以下の山中設計(鳥取県米子市)の事例である。
基礎工事の見積りに3社参加した。うち1社は、初めて分離発注の見積りに参加した。価格はほかの2社と比べ、とても安く、担当者が根拠と施工実績を聞いたが、問題ないようだったので採用した。
基礎工事が始まった。根切り、砕石敷き、ランマ一転圧、捨てコン打ち、基礎配筋。ここまではよかったが…。
プーチング立上がり部分の型枠が手付かずで「明日、ベースコンクリートを打つ」と言う。「間に合うの?」と聞くと「大丈夫」という返事。担当者は「そうかなあ?」と思いつつ、翌日現場へ赴いた。
あぜん!フーチング立上がり部分の型枠ができていないのにコンクリートを打設しようとしている。「ちょっと待った!」「えっ、何?」話がかみ合わない。よく聞けば、根切り土の側面が型枠代わりだと言う。「いつもの工務店は、これでOKだ。設計図面より幅の広いプーチングができ、生コン使用量も増えるのだから、文句ないだろう」と。いやはや、工務店による流儀の遣いに驚いた。また専門工事業者とはいえ、専門知識がないことも驚いた。当然その日の作業は中止。きちんと型枠を施工し、日を改めて打設したのは、いうまでもない。
設計図面と見積り要綱書だけで、表現できないことがある。初めて採用した専門工事会社は、ときとして思いがけない施工をすることがある。まさに現場は、何が起きるか分からない。
■多くの業者を比較検討する
分離発注の見積りで最も大事なのは、見積りに参加した専門工事会社が、どこも同条件で金額をはじくことだ。上記のように施工方法が違えば金額も差が出る。VEと誤った施工は根本的に違うと設計監理者は見極めなければならない。住宅会社や工務店は、下請け業者を固定している。そのほうが、上記のような思いがけない事件は発生せず、現場の管理は楽だ。同じ理由で、分離発注を行う設計事務所にも、専門工事業者を固定しているところがある。実は、ここが難しいのである。住宅版CM/分離発注では、信頼できる専門工事業者も求めながらも適正価格を追求しなければならない。
住宅会社や工務店は、「自分のところの下請けが、いちばん信頼できて価格も適正だ。だから、物件ごとに専門工事会社が入れ替わる分離発注は、危険だ」と言う。本当に、そうだろうか?専門工事会社の腕の善し悪し(信頼度)や適正価格は、あくまで相対的なものである。つまり、多くの業者を比較積討する材料をもって、初めて判断できるものではなかろうか。次回は、そのあたりに触れたいと思う。
山中省吾プロフィール:
1953年北海道生まれ、その後、鳥取県米子市に移り住む。1974年米子高専建築学科を卒業後、地元の設計事務所に勤務。1988年に独立し、山中設計を設立、代表となる。設立後まもなく、オープンシステムを開発、ハウスメーカーや工務店に頼らない家づくりを宣言する。1998年には、日本中から集まった設計者たちとオープンネットを設立、代表となる。
掲載者
misakiarch@u01.gate01.com
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