オープンシステム関連情報
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日経アーキテクチュア 2003年11月24日号 『エコ・キューブ#02』
  平面を4分割した半規格住宅

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▲リビングからキッチンを見る。柱は建物の中心部にまとめられており、それ以外は自由に仕切ることができる。間仕切り壁や建具などはシナベニヤを使用。「スケルトン・インフィルの考え方が、視覚的にわかるようにした」(古後氏)(写真:山本伸生)

 大分市に事務所を構える建築設計者、古後信二氏(34)が提唱する半規格型の住宅だ。正方形の平面を、910mm幅の廊下で田の字形に区切った単純な基本構成を持つ。4分割されたスペースの大きさはそれぞれ8畳の正方形だ。今年2月に完成したエコ・キューブ#01とともに、2003年度のグッドデザイン賞を受賞している。

「シンプルで合理的、しかもローコストのプランを追求すると、必然的に正方形なる」と古後氏は話す。同じ床面積ならば、正方形が外壁の面積を最も少なくできる。これによって建設コストが低くて済み、省エネにもつながるというわけだ。

 設計の基本コンセプトは「内に開き、外に閉じる」。例えば、プライバシーを守るために、玄関のある東側外壁には窓を一つも付けていない。壁で囲まれた2階の「インナーバルコニー」に、通風のための横長の開口を設けているに過ぎない。逆に、建物内には個室をつくらず、すべて吹き抜けのリビングでつながるようにしている。吹き抜け上部のインナーバルコニーに面した部分は全面開口としているので、閉鎖的な外観とは対照的に、内部は明るく開放的だ。

 建て主の妻は「基本形は決まっていても意外と自由度が高く、トイレや風呂、階段の位置をどこにしようか、いろいろと想像力をかきたてられた」と振り返る。「プランを考えることが楽しくなって、古後さんと夫と3人で、いろいろとアイデアを出し合った」。

 自由度が高いのは、建物内に柱が少ないからだ。中央部にまとめて配置された4本の柱しかないので、周囲の空間を自由に仕切ることができる。子供の成長に合わせた間取りの変更も容易だ。(青野昌行)

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写真企画 地方発のデザイナーズハウス

 エコ・キューブ#02は、地元で年1回発行される住宅情報誌「ワイズ」(発行:大分合同新聞社)が企画したデザイナーズハウス・プロジェクトの第一号だ。

 これは、大分を拠点とする3人の設計者(古後氏、長野ひろし氏、塩塚隆生氏)と地元工務店5社との共同プロジェクト。3人の設計者がそれぞれ一つずつモデルプランを提案しており、それを地元工務店が施工するシステムだ。古後氏が提唱していたエコ・キューブも、このプロジェクトのモデルプランに取り入れられた。

 プロジェクトの狙いの一つは、地元工務店の支援だ。設計事務所がデザインした住宅を工務店のメニューの一つに取りそろえることで、従来型の住宅に飽き足らない、デザインに敏感な消費者も逃がさないようにする。ワイズを企画。編集するプランニング大分の田代好昌氏は「モデルプランを掲載した冊子を、工務店が積極的に営業に活用してもらいたい」と話す。

 単に設計者を紹介するだけでなく、モデルプランを用意したのは、価格を下げるためだという。規格型なので、設計監理科は100万円という安さだ。ただし、エコ・キューブ#02のようにプランを変更する場合は、その分の費用が上乗せされる。

●建設までの流れ
登録工務店5社から、1社を選定。原則として、建設予定地に最も近いエ務店を選ぷ。
工務店に連絡を取り、三つのプランから気に入ったものを選択する。
プランをデザインした設計者と契約する。
設計者と相談しながら、敷地や好みに合った実施設計を完成させる。
実施設計の内容をもとに建築費を確定し、工務店と契約する。
設計者が監理し、工務店が施工する。


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建て主の声


シンプル

 設計者の古後さんとは高校時代の同級生だ。しかし、家を建てるという大きなことを任せるのだから、同級生というだけで設計を頼んだわけではない。ハウスメーカーも2社ほど検討したが、デザインが今ひとつ物足りなかった。また、ハウスメーカーの価格の不透明さも気になった。交渉次第で2〜3割も価格を下げられるようだと、いったいどういう仕組みで価格を調整しているのか不信感を抱く。

 デザインはできる限りシンプルにするよう意識した。出来た建物には全体的に満足している。特にリビングの開放感が気に入った。(夫)

自分たちの家

 実を言うと、古後さんとの最初の打ち合わせでプランを見た時には、どうしても「自分たちの家」という感じがしなかった。何でもこちらの要望を聞いてくれるハウスメーカーと違い、古後さんは設計に対する自分の考えをしっかり持っている。そこに違和感を抱いたのかもしれない。当初は意見の食い違いで、かなり険悪な雰囲気になってしまった。

 しかし、2回目の打ち合わせでプランを見た時の印象は全く違っていた。それほど大きく変わったわけではないが、階投の位置など、こちらの言ったことがしっかりと反映されている。その時、まさに「自分たちの家」だと感じた。

 それ以降、プランを考えることが本当に楽しくなった。いろいろとアイデアを出したが、最終的には、古後さんがしっかりまとめあげてくれた。住み心地には非常に満足している。子供たちに昼寝をさせている時、南側の大きな窓から雲が動いていくのが見えたりして、本当にリラックスできる。(妻)

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会員名 古後 信二
関連HP アトリエ・ラッツ




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