オープンシステム関連情報
各種メディアへの掲載、建物の受賞等、オープンシステムに関する情報です。
 

建築知識 7月号
  大沢 宏(コウ設計工房)・山中 省吾(オープンネット)
(株)エクスナレッジ 販売部 TEL:03-3403-1321 FAX:0120-249-244

写真
特集 見積り・CM・分離発注
ホントの[ローコスト住宅]徹底検証
第1章 [コストダウン]の基礎知識
■木拾いの手段と注意点 調書を活用した木拾いの実践 (p114)
大沢 宏(コウ設計工房)
第3章 CMで[コストコントロール]
■CM方式にもとづく分離発注のパターン
■住宅版CM方式と従来の発注方式の違い (p143)
山中省吾(オープンネット)
■住宅版CM方式で失敗しないポイント
■CM方式による分離発注の役割と責任を把握する (p145)
山中省吾(オープンネット)
■リスク回避のための書類・図面作成術
■CM・分離発注のトラブルを避ける (p148)
山中省吾(オープンネット)
■CM方式・分離発注方式Q&A (p160)
大沢 宏(コウ設計工房)
山中省吾(オープンネット)
TOPICS
■CM方式による分離発注を実践〜オープンネットの活動・仕組み (p147)
山中省吾(オープンネット)
COLUMN
■CMの報酬はこう決める (p149)
山中省吾(オープンネット)
第4章 実例から検証[ホントのローコスト住宅]
■土地の選定から始めたCMによる分離発注方式住宅 (p180)
山中省吾(オープンネット)
今月の特集本 ▼価格の見える家づくり (p42)

以下は、山中省吾(オープンネット)の執筆部分をまとめたもです。

写真実践からCMへ
小生はCMの実践者であるが、CMの研究をして実践に移したのではない。このほうがよかろうと自分なりに工夫して取り組んできたことが、後に日本建築学会や日本建築家協会、あるいは建設経済研究所などから、「君のやっていることはCMだ」といわれ、はじめてCMの存在を知った。
建築学科を卒業して地方の設計事務所に勤め、官民の設計監理に携わった。35歳で独立し、14年が過ぎた。後にCMだといわれるものに取り組んでから、ちょうど10年が経った。考え方を同じくする設計事務所が集まってネットワークを構築し、現在、全国に235の設計事務所が取り組むまでになった。
小生は自分の体験した範疇でしかCMを書くことができない。小生たちはこうしている、ということが中心になる。学者や研究者ではないので、客観性に欠けるかもしれない。これから書くのはCM実践論、もっと平たくいえばCM経験談である。

何故今CMか
さて、冷静に建築業界を眺めてみれば、わが国におけるCMでの着工数は未だ微々たる物でしかないことが分かる。住宅に限ったとして、その数はせいぜい年間で数百戸程度。多くみても千戸に満たないであろう。戸建て住宅全体の市場規模が年間数十万戸であることを思えば、CMによる着工数は0.1%前後というのが現状である。
では、何故今CMか。それは次の理由による。@数年前までは限りなくゼロに近かった。A胎動の兆しが見えて以降その数は着実に増加してきた。B今後しばらくは急増し続ける要因がある。C建築主、設計者、専門工事会社が嬉々として取り組んでいる。D住宅産業全体が凋落傾向に向っている中での出来事である。だから、今CMである。このように見ていくと、近い将来、CMは住宅発注方式の重要な選択肢になりうることは十分予測できる。
従来の発注方式は、住宅供給側(ハウスメーカー、工務店)からの一方的な情報に偏りすぎていた。供給側にとっては必要であり、必然の流れだったのであろうが、建築主や専門工事業の人たちには、無駄と無理の押し付に見えても仕方が無かった。
無駄とはすなわち談合、多重下請構造、建築資材の複雑な流通、あまりに過剰な営業・宣伝、その他、多々ある。無理とは営業マン主導の設計、過剰なノルマの現場管理、異常に安い下請け金額などである。
このような複雑な産業構造をいちど頭の中で解体し、建築主にとって必要なものだけを拾い上げて再構築したら、小生流のCMになった。既存の建築業界の枠組みを取り払ったところに、CMが見えてきたと小生は考えている。
写真従来型の発注方式
 発注方式だけをみれば、建築主の選択肢は限定されている。それは、設計施工一括発注で発注する方式。全国大手のハウスメーカー、地場の工務店、あるいは親しい大工、選択肢はいろいろありそうに見えるが、いずれも建物全体を一括で契約(発注)することが前提である。すべてとはいわないまでも、住宅全体の99%近くはこの設計施工一括発注方式で建てられている。
ごく一部ではあるが、設計と施工を分離して発注するケースがある。全体の1%といったようなきわめて少ない数だろう。ただし、ハウスメーカーや工務店が設計事務所に委託するケースは、設計と施工の分離とはいわない。建築主が設計を設計事務所に発注したとしても、工事は施工会社に一括で発注するのが通常である。設計監理と施工を分離して発注する方法は、設計者が中立的な立場で関与することでそれなりの意味はあるが、設計者にコスト分析、施工チェック能力が備わっていなければ、CMには程遠い。
また、施工の一部を分離発注するケースが考えられる。例えば親戚や知人が瓦屋さんとかの専門工事業を営んでいる場合などである。元請けは歓迎せざる行為として嫌うであろうし、たとえ一部を分離で発注したとしても、このケースは建築発注方式としてはあまり意味を持たない。
親しい大工に頼み、それぞれの工事代金を建築主が実費精算する場合がある。数十年前はこの方式が一般的だったのだろうが、工務店やハウスメーカーの台頭によって、現在ではほとんど見られなくなった。分離発注の形態には違いないが、そこにはマネジメントといえるものが存在しない。建築主による直営工事である。とてもCMとは呼べない。

住宅版CMによる発注方式
住宅版CMは、従来型発注方式(設計・施工一括発注方式)に比べれば数は圧倒的に少ない。しかし、各地で機運は高まっており、潜在的需要はかなり多いと思われる。今後の住宅産業を占う上で、欠かすことはできない。
欧米のCMは大型物件を中心に考案され、発展してきた。住宅であまり考慮されなかったのは、欧米ではそれなりに合理的な職人機構や物流体制が出来上がっていたからだろう。日本のように極端な多重下請構造は見られない。また、日本のように巨大ハウスメーカーも存在しない。住宅建築は地場産業的色合いが濃い。日本には独特の住宅産業発展の背景があるから、日本独特の住宅版CMが大きな意味を持ってきたともいえる。
住宅版CMは設計事務所が中心になって、建築主、専門工事会社を巻き込む形で発展してきた。設計事務所は建築主から業務を受託する。業務の内容は、設計監理、コスト分析、発注代行、工程管理など住宅建築における一連の作業が含まれる。工事は建築主と各専門工事会社が直接契約する。住宅版CMではこの方式が最も多く、小生たちのグループが行っている方式で、「オープンシステム」と呼んでいる。
一方、工事の元請け会社を決めた上で、下請け会社を入れ替えるという方式がある。また、設計監理、施工に直接係わらずに、建物全体をマネジメントするという考え方もある。その場合、建築主はマネジメント会社と業務委託契約を交わし、マネジメント会社主導で設計会社、施工会社を決めることになる。
いずれにしても現在の住宅版CMは過渡期であり、今後、発注代行業務に特化、施工管理に特化して業とするといったような、さまざまな業務形態の出現も考えられる。

※ 表1 従来型の発注方式のパターンとCMによる発注方式のパターン

従来の発注方式と住宅版CMによる発注方式
 従来型の一括発注方式と住宅版CMによる注方式の最大の違いは、業務を行う者の置かれている立場の違いにある。ちなみに、ここでいう一括発注と一括請負は同じ意味である。建築主から見れば発注であり、施工会社から見ると請負である。
設計施工一括請負では、建築主と請負者の利害は対立する。請け負った側は、建築主に対して明らかにできないことが生じる。これはやむを得ない。置かれている立場が違うからである。
 一方、新しい発注方式=CMを行なう者は、建築主や施工者に対して、より中立的な立場、どちらかといえば、建築主に代わって業務を代行する立場にある。そこが請負と業務委託の最大の違いである。
一括請負の場合は、より大きな金額で請負って、より小さな金額で下請けに出すほど、利益は増える。また、仕様変更や下請けとの価格交渉で金額が下がれば、大部分は請負った会社の利益となる。
CMの場合は、まったく左右されないとは言わない。CM実践者の得意、不得意とか、住宅に対する考え方の影響はあるだろう。しかし、少なくとも、専門工事会社の金額をいくら下げても、CM実践者の受け取る報酬は変わらない。CM実践者の努力によってもたらされた利益は、基本的に建築主に還元される。
ちなみに、CMによる分離発注の場合は、専門工事会社は従来のような下請とはならない。建築主と請負契約を交わすのだから、元請け専門工事会社というべきであろう。

注:CMの中には工事代金が下がるほどCM会社の報酬が増えるという方式もある。
 
※表2 設計施工一括発注方式とCMによる分離発注の比較

住宅版CM−分離発注を行う目的
住宅版CMはまだ経験者が少ない。設計事務所が分離発注をすれば、必ず安くなる、と短絡的な考えで取り組むと大怪我をすることもある。CMは安易に形だけを真似ても効果はでない。準備と心構えが必要だ。住宅版CM−分離発注が、設計事務所を中心に広がっているのは、それなりの背景がある。
多くの設計者は肌で感じていたのだろう。住宅がこのように高いのは何故か。欠陥住宅が後を絶たないのは何故か。あのような過剰な宣伝や営業費用は何処から出ているのか。営業マンのチェックシートで設計が進められて良いのだろうか。多くの物件を同時に抱えて、現場管理が行き届くのか。技術を持った職人が隅に追いやられているのは何故か・・・。
従来の設計監理業務にも疑問があった。建築主から設計監理を依頼され、工務店から見積りを取る。予算をオーバーした。設計者は価格決定権を持たない。あくまでも工務店の見積金額が価格だった。設計変更という後ろ向きの作業が始まる。石をタイルに変えた。羽目板をクロスに変えた。安い材料でデザインする涙ぐましい努力をした・・・。やっと、予算内に落ち着く。工事が始まる。現場監督は多くを掛け持ちしていて、打ち合わせが密にできない。設計図面と施工に食い違いが生じた。職人と直接打合せをする・・・。やはりどこかがおかしい。
このような状況下で、分離発注を試みる設計者が現れた。石やタイルの実勢単価を知り驚く。設計の自由度が増し、創造の可能性が広がった。同じ予算内で、多くのことが可能になった。
建築はいったい誰のものか。言うまでも無く、建築主のものである。すべての原点を建築主に置く。そこに徹底することで、設計者も専門工事会社も、本当の意味で活かされる。これが、CMを行う目的であり、原点である。
設計者=CMrには、多くの知識と経験が要求される。さらに根気と忍耐までも。CM草創期だからやむを得ないともいえる。にもかかわらず、設計者が嬉々として取り組み始めたのは、CMの可能性の大きさを見出したからに他ならない。小さな設計事務所であっても、右手に創造の刀を、左手に合理性の刀を持てば、大企業にも勝てるという痛快さであろうか。

住宅版CM−分離発注の役割と責任
 住宅版CMにも様々な形態があることは既に述べた。ここでは、現在最も主流となっているCMによる分離発注について、それぞれ関係する者の役割と責任について整理する。
 @建築主、A設計者=CMr(コンストラクション・マネージャー)、B専門工事会社の三者がCMによる分離発注の当事者となる。この三者は、各々が担う役割の違いはあっても、住宅というプロジェクトを完成させることに協力し合う。その意味において平等である。
 この三者は、CM−分離発注方式がどのような流れで進められていくか、また、各々の役割と責任はどのようなものがあるかを事前に理解し、把握していることが大前提である。
 分離発注によるCMとはいっても、発注形態そのものは建築主による直営工事と何も変わらない。極めてシンプルな方式である。ただひとつ違うところは、直営工事の良さを最大限に発揮するために、設計事務所のマネジメントを伴うということである。
 原則は、発注者(建築主)は発注者として、設計者(CMr)は業務の受託者として、専門工事会社は請負者としての責任を負う。
以下、各々の役割と責任について具体例をあげてみる。
 
建築主の役割と責任
 委託した業務や発注した工事に対して、代金の支払い義務が生じるのは言うまでも無い。さらに、家にたいする自分考え方を設計者に伝え、各種申請書に必要な添付書類(所得証明書や土地の登記簿等)で、建築主でなければ用意できないものを用意することは最小限必要である。その他、実務面の大部分は業務を受託した設計事務所が代行する。
 もし現場で事故が起きたとき、責任は建築主(発注者)に及ぶか。答えは、及ばない。請負った施工業者が責任を負う。分離発注の場合は、それぞれが請負った工事の範囲について責任を負う。ただし、建築主が直接指示をして安全上無理な施工をさせた場合は、建築主に責任が及ぶ場合もある。足場を取り払って工事をさせるとかであるが、もっともその場合、施工会社は工事を行わないだろうし、そのような指示を建築主が直接行うことはまずあり得ない。設計事務所が業務を代行しているからである。
 では、養生中の床に傷が付いた場合は誰が直すか。傷つけた者が分かれば、その者の責任で直す。問題は誰が傷を付けたか判らない場合である。この場合は、建築主が直す費用を負担することが生じる。ただし、施工者が適正な養生を怠っていた場合は、施工者の責任で直すことになる。
 工事中の盗難や火災についても同様であり、損害は建築主に及ぶ。また、設計事務所や専門工事会社が倒産した場合も、建築主に損害が発生する。
 このように、家づくりはいたるところに大きなリスクが潜んでいる。リスクを回避するために、建築主は工事保険の活用は最低限必要であり、さらに、設計事務所や専門工事会社が、どのようなリスク回避策を用意しているかを、確認しておかなければならない。

設計者=CMrの役割と責任
 受託した設計監理とマネジメント業務について、業務を遅滞なく誠実に実行する責任がある。契約、支払いといった、建築主でなければできないこと以外の大部分の業務は、設計事務所が建築主に代行して行う。
 各種申請業務や設計、見積りの分析、施工者の選定、契約書の準備、工事監理などを行うが、設計者はその都度建築主に報告し、了解を得ながら進めなければならないのは当然である。
 設計内容に間違いがあり、その結果発生した被害は、設計者の責任となる。例えば、構造計算ミスにより、床が落下した場合は設計者の責任である。
 支給の建材を間違って発注した場合はどうか。通常の場合は、設計者が数量やサイズを検討し、建築主に代行して発注する。この場合の責任は設計者が負う。建材販売会社やメーカーが積算し、間違いがあった場合は販売会社やメーカーが責任を負う。
 工程表の作成、工事工程の調整は設計者が行う。各工事会社は円滑に工事が進むように、設計者に協力しなければならない。

専門工事会社の役割と責任
 各専門工事会社は、通常は下請けとして工事に参加する。ところが、分離発注の場合は元請けである。まず、元請けとしての意識の切り替えが必要である。元請け、下請けにかかわらず、請負った範囲を確実に完成させるのは当然として、元請けは労災に対する責任を負う。政府労災は当然のこと、損害保険等でリスクをカバーしておくことも必要である。
 専門工事会社は、工事内容を改善したほうが良いと認識した場合は、事前に建築主や設計者に提案しなければならない。請負った部分に関係する前工程や後工程についても同様である。例えば、塗装工事が終わった後に、施工不良を指摘されても、下地の不陸を理由に言い逃れは許されない。下地の施工が悪ければ、設計者に指摘して、確認を受けてから施工に入るべきである。

◇リスクマネージメントのために −各自の指針を立てる

CM−分離発注の場合は、各専門工事会社の工事明細がすべて建築主に公開される。したがって、曖昧さは通用しない。一括請負なら、基礎工事費が増加した分を仕上げで穴埋め、という融通もできるが、分離発注はそうはいかない。
基礎工事費はいくら増加したのか。その理由は。設計に問題があったのか、積算に落としがあったのか。それとも予測不能の地下水が噴出したのか。建築主に対して原因を明らかにし、誰がどのように負担するかを決めることになる。
建築には様々なリスク要因が潜んでいる。損害保険等でリスク回避をはかることは当然必要である。だが、CM−分離発注に完全に対応した保険は今のところ見当たらない。そのためオープンシステムでは、大手損害保険会社とタイアップして、独自の補償共済を立ち上げた。共済というスタイルをとったのは、保険の性格上どうしてもカバーしきれない分があり、その隙間を埋めるためである。
しかし、最大のリスク回避は、保険を使って処理することではなく、ミスやトラブルを未然に防ぐことである。保険は万に一つの予測不能な事故に対して使うものであり、頻繁に使えば信用を失い、顧客を失うことになる。それでは本末転倒というものだ。
トラブルを未然に防ぐには、まず、業務の流れをしっかりと把握する。次に必要な資料、書類、図面を把握する。技術者は書類や図面をみると具体的な作業内容が浮かんでくる。起こりうる問題も想定できる。何が飛び出すか分からない夜道ほど、不安なことはない。
CM経験者に体験を聞くことも重要である。いつでも相談できる経験者が側にいれば心強い。未経験のことに踏み切るのは誰でも不安である。新しいことを切り拓いて成功に導くには、方法はひとつしかない。それは、実行することである。
以下、実務の流れに沿って書面、図面等の留意点をあげる。

〈業務委託契約前の準備〉
・CM−分離発注の説明する資料
営業ツールとしても活用できる。関係者がCM−分離発注を理解しないままでスタートすると、後の業務が非常にやり難い。ここで大部分のトラブルの因をつくってしまう。
※資料1 説明書の例

・業務報酬の算定書
業務を受託する前に、報酬をきちんと決めておくことが肝要である。従来の設計施工一括請負の感覚から抜け切れない建築主は、業務報酬料の額について抵抗を示す。まず、ここが理解できなければ先に進まないほうがよい。後のトラブルの原因になる。
※資料2 業務報酬算定書の例

〈業務委託契約のとき〉
・業務委託契約書
通常の設計監理業務に加えて、見積り金額の比較検討、施工業者の選定、工程の調整といった分離発注に必要な業務を明記しておく。また、基本計画・実施設計はかなりの時間を費やすので、設計事務所の負担にならないような支払い方法、時期を決めておく。
※資料3 業務委託契約書の例

〈基本計画のとき〉
・模型またはCG
建築主の思いをできるかぎり引き出すことに努める。後の変更を起こさないためにも、模型は有効。この模型は計画案を立体的に再検討するのが目的。場合によってはダンボールでもかまわない。間取りやデザインとともに、断熱や気密に対する考え方、設備や機能、仕上げ材料などについても良く話し合い、方針を整理しておく。斬新な提案で夢を膨らませるのもよいが、常に合理的な工法、形、材料の選択も意識しておく。価格を考慮しない設計は意味がない。予算を大幅に上回れば信用を失い、手戻りも大きい。

〈実施設計のとき〉
・設計図書全般
CMによる分離発注だからといって、特別な図面が存在するわけではない。公共工事で通常描いている図面をそろえれば足りる。施工図レベルの図面を描く必要はないが、最低限、専門工事会社で積算ができる図面であること。図面サイズは自由であるが、プリンターの使用や製本の保管等を考えれば、A2よりもA3サイズが案外使いやすい。

※ 表3 木造住宅の標準的な図面の例

〈見積りのとき〉
 見積り期間は、通常は1ヶ月程度である。予算内に収まらなければ、設計変更などを行うため、さらに伸びる。経験の浅い事務所は、2〜3ヵ月のスケジュールを組み込んでおくほうが無難である。見積りの最終調整ができないままに見切り発車することは、決して行ってはならない。必ずといってよいほどトラブルを招く。また、その時点で本来のCMではなくなる。
・見積り参加案内
オープンシステムでは登録してある専門工事会社に、WEB上から自動的に案内が流れるが、登録業者以外の案内はFAX等で。
・発注説明書
見積り方法の説明、提出された見積り内容の検討方法、業者の選定方法等。見積り提出時には、VE提案も行う。
・質疑応答書
質疑は書面で行う。
・見積り参加業者金額比較表
提出金額の一覧表、折衝や変更による金額の変化も分かる。
・見積り結果通知書
業者選定の結果を、参加業者全員に通知。
・支払い予定表
最終金額の一覧表と支払日、支払い先、金額を記入。

〈工事着工前〉
・工事請負契約書、約款
決定した専門工事会社毎に工事請負契約書を作成。分離発注を想定した内容にしておく。
・工事工定表
経験の少ないときは、各業者が参加して作成する。住宅程度で2時間程度。業種ごとの担当者(職人名)電話、FAX、携帯電話も記入。
・保険、補償に関する書類
各専門工事会社の労災保険を確認。工事保険、その他補償に関する申請等。

〈工事監理のとき〉
・工事監理チェックシート
監理のポイントをまとめておく。建築主への報告書にもなる。

〈竣工のとき〉
・竣工検査チェックシート
チェックポイントをまとめておく。建築主への報告書にもなる。
・竣工引渡し書

◇オープンネットの活動・仕組みについて

オープンシステムは1992年から行われていた。全国的なネットワークとしての広がりを見せ始めたのは、1998年のころである。それまでは、関心を持った数社の設計事務所が、お互いに連絡を取り合いながら進めていた。成功例、失敗例、その他お互いが経験したことを交換し合っていた。
わずか数社の集まりでも個性の違いが見えてくる。創造に生きる設計事務所の特質だろう。施工のことなら**氏、関連法規は**氏、広報のセンスなら**氏と。多くの事務所が力を出し合えば、より多くのパワーが生まれることを知り、また、個々の事務所にできることの限界も感じた。
CM、即ち建築をマネジメントすることとは、同じ手法を採用したとしても、結果に自ずと差が出る。それがマネジメントである。手がける技術者の力量が如実に表れるものだ。オープンネットはこのような背景から誕生した。
ネットワークの活力を個々に還元し、活力を与えられた個々は、さらにネットワークに新たな活力をもたらす。オープンネットの最大の目的は、個々の事務所ではできないこと、あるいは極めて困難なことを切り拓き、解決していくことにある。
所期のころは、建築主の理解を得、受託するにはかなりの苦労があった。受託が目に見えて増えだしたのは、この1〜2年のことである。オープンシステムの解説本『価格の見える家づくり』が大きな起爆剤となった。この解説本は、言わば総論編。今後、定期的に事例集を出版する。事例集は家づくりの過程をよりリアルに描き出そうというもの。各論編の展開である。
オープンネットは住宅のフランチャイズとは違う。トップダウン的に決定事項を流すのではなく、現場の最前線(参加設計事務所)が情報を共有し、意思決定をする。個々が全体に影響を与えながら、常に変化を続けていく組織である。最近は住宅に限らず、中規模ビルにも果敢にチャレンジする設計者が現れ、オープンシステムの先進事例として新しい分野が開拓されている。
以下がオープンネットの主な活動である。

〈広報活動・営業支援〉
・ホームページでオープンシステムの解説、会員設計事務所の紹介、事例紹介、建築主と会員の出会いの場(OMIAI)などを提供
・書籍の出版でオープンシステムの解説、会員事務所の事例紹介など
・新聞、テレビ、雑誌などのメディアを通じた広報
・ビデオ、ガイドブック、パンフなどの営業支援グッズの提供
・各地の説明会などの支援

〈技術向上の支援〉
・メーリングリストを活用した会員相互の意見交換、情報交換
・研修会、勉強会などの開催
・実務を通した研修(OJT)

〈業務に対する支援〉
・契約書、設計シート、積算データ、発注説明書、見積要綱書、出来高調書、支払い通知書、工事監理チェックシート、引渡書など各種書類の共有化
・積算数量、工事単価、工程管理等会員の経験情報の共有化
・建材メーカーや販売会社の直販ルートの開拓
・専門工事会社をネットワークし、円滑な業務につなげる。

〈補償・リスク回避〉
・補償共済会を立ち上げ、工事現場での事故、専門工事会社の倒産リスク、
設計事務所の倒産リスク、瑕疵補償、などに対処
・補償の裏付けとして大手損害保険会社と再保障契約

※グラフ1 会員設計事務所数と着工数
※グラフ2 OMIAI申込み数と成約数
※グラフ3 地域別会員数

■事例解説

計画の経緯
 建築主の小学校教師は、オープンシステムの解説書『価格の見える家づくり』を熟読しており、家をつくるならこの方式と予め決めていた。環境問題や地場産業の振興に高い関心を持っており、国産材の使用、地元で生産している和紙の使用を希望していた。もうひとつの絶対条件は、家の中に「学びの雰囲気をかもし出す」ということであった。2000冊の書籍を収納する本棚と、家族共通の学習スペースを確保すること。「家に本無きは人に魂無きが如し」の体現である。
 まず初めに、業務委託契約を交わす。この段階では建設地も決まっていないし、建物の規模も決まっていない。契約書に記入する業務の予定期間は、いつごろまでに建設地を決めるかを想定して、以後の流れを落とし込む。建物の規模と予算は、家族構成やライフスタイルを聞いた上で、述べ床面積200u、3100万円と想定した。
 受託した山中設計は、業務委託契約を交わさないかぎり、計画案に着手しないことにしている。また、業務委託料は想定した床面積で割り出し、実施設計完了後に増減が生じれば、最終支払い時に清算する。業務報酬料は事務所独自の算定式があり、この物件は580万円となった。
 ちなみに、オープンシステムを始めたころは、上記のようにはいかなかった。建築主は、計画案無しで業務委託契約を交わすことに抵抗があった。ハウスメーカーや工務店はサービスで設計図を描く。また、住宅の場合、設計事務所の報酬は100万円以下という(田舎の?)相場があった。そして、実績は・・・。
 実績を問われると弱かった。当初は実績づくり(先行投資)の意味もあり、上記のような規模は300〜400万円程度の報酬料で受託していた。宣伝広告費と思うしかない。徐々に改善し、現在のような条件で受託できるようになるまでには、5〜6年を要した。結局、根気よい説明と、着実に実績を積み上げるしか方法は無かった。現在は、建築主の満足度が最高の営業であり、宣伝である。
 土地の選定から業務は始まった。市街地の中心近くに位置すること。周囲に自然が残っていること。西面に山があり、西日がカットされること。東面の道路と西面の道路に約1.8mの高低差があり、おもしろい計画ができそうだということが決め手になった。

データ
・業務委託契約 2000年8月
・基本計画着手 2000年10月
・実施設計完了 2001年7月
・着工     2001年9月
・完成     2001年12月
・建設地    鳥取県米子市 第2種低層住居専用地域
・受託事務所  山中設計 オープンシステムの実績80棟
・敷地面積   225u
・建築面積   112u
・1階床面積  109u(車庫20uを含む)
・2階床面積  88u
・延べ床面積  197u
・建ぺい率   50%
・容積率    79%
・構造     木造在来軸組み工法
・業務報酬料  580万円
・工事金額   2450万円(業務報酬料は除く)

※画像1 事例建物

ポイントの解説
・基本設計、実施設計、見積り徴収、価格の分析、工事会社の選定、請負契約の準備、工程表の作成、工事監理、工程の調整、完成引渡しという一連の流れを、担当の設計者がすべて行った。
・敷地の高低差を活かして、スキップフロアにした。上下階の移動がとても短い。また、階段室周りの本棚、勉強スペースに空間的な広がりと変化が出た。
・構造材は基本的に現しとした。配線、配管ルートを確保する部分にだけ天井を張った。1階の床は杉板24mm、2階の床は杉三層パネル36o、屋根面は杉板30oを張った。
・大きな吹き抜け空間ができるので、断熱には力を入れた。屋根野地板の上にさらに断熱を施した。壁は内断熱としたが、当地ではかなり厚いものとした。サッシは断熱サッシを使用した。
・壁は漆喰を塗り、目立たないところは和紙風のクロスを貼った。すべて漆喰としたかったが、予算の制約上やむを得なかった。
・照明器具は地元産の和紙で作ることにした。スケジュールの関係上、既製品の照明器具で設計し、予算を計上した。工事中に試作品をつくり、最終的にほとんどの照明器具を和紙に変えた。結果、いくらか安くなり、しかも、建築主に自分の家だけのオリジナルという満足感が生まれた。
・本棚、下足入、食器棚は国産の杉で造りつけ家具とした。また、テーブルも国産の杉で造った。
・良質な国産材をいかに調達するかが、この建物の大きなポイントだった。建物の良し悪しとともに、工事費にも大きく影響する。結果的に、構造材、板材共、産地市場で落札した。オープンネットが開拓したルートの利用である。周辺の製材所は、乾燥技術が進んでいるということも選択に理由になった。
・他にオープンネットルートで調達した建材や機器は、断熱サッシ、石材、塗料、ユニットバスがある。専門工事会社と材工共での契約が基本であるが、このように、建築主が別ルートで材料や機器を調達し、専門工事会社に支給して、施工手間だけの契約もある。
・予算がいくらかオーバーしたので、外溝の御影石敷きを取りやめた。
・監理はほとんど毎日行った。午前、午後の2回行くこともあった。監理に行く時間を利用して、職人と工程の調整等も行った。監理の内容は週に2〜3回程度建築主に報告した。
・担当の設計者も職人も、オープンシステムを既に何回か経験している。現場はトラブルも無くスムーズに進行した。
・担当の設計者がすべての業務を行うのは、たいへんハードなことである。経験を積んでからであるが、担当者はその建物に関するすべての打合せや検討事項を把握しているので、話の行き違いによるミスはほとんど発生しない。また、現場での決済が非常に早いという大きな利点もある。
・工事中から付近の住民の関心を引き、町内会から完成見学会の要請があった。休日の2時間限定にもかかわらず、約30人の見学者が訪れた。外観は現代的、中は、昔の民家風、というのが訪れた人の感想だった。

※資料4 工事工定表
※資料5 工事金額の詳細

■分離発注Q&A

Q:建築主への「CMによる分離発注の仕組み」はどのように説明するか?
@主な説明方法/機会は、外部施設を使った講演会、事務所の会議室を使った少人数の説明会、建築主の求めに応じた個別対応、ホームページを活用した説明などが考えられる。
A主な説明方法/説明者は、詳しい経験者を講師として呼ぶか、自ら行う。
B主な説明方法/道具は、パソコン資料を大型画面に映す、説明ビデオの活用、印刷物を配布するのが主流。
@〜Bをどのように組み合わせるかは、事務所の状況や戦略に拠る。無理をしないで、少人数の説明会を継続して行っているところに、成果が出ている。
CMによる分離発注の仕組みは、さほど難しくない。極めてシンプルであり、理論的には誰でも理解できる。また、賛同する者は多い。むしろ、それが現実に可能か、というところに確信が持てないようだ。したがって、自らの実例を通して体験を語ること、同じ手法で行っている多くの実例を見せることが、最も効果的な説明ではないだろうか。

Q:CMによる完全分離発注はどのくらい手間がかかるか?
 業務を行う者の経験や能力によって、大きく違うようだ。経験者の声を聞くと、年間に可能な建築士一人当たりの量は、木造住宅で3棟〜4棟が最も多い。中には、ひとりで5〜6棟受託している事務所もある。設計事務所と工務店の両方の経験を積んできた設計者に多い。
 基本設計にかける期間も事務所によって大きく違う。2〜3ヶ月で済ませるところもあれば、半年、1年以上費やしているところもある。能力というよりは、事務所の方針のようだ。実施設計は1〜2ヶ月。これはどの事務所もあまり変わらない。実施設計は機械的に流れる作業だからだろう。見積り期間は、通常は1ヶ月程度。予算内に収まらなければ、さらに伸びる。工事期間は3〜5ヶ月。
 ひとつの建物に携わる業務期間は、最短8ヶ月というところで、最長は2年になる場合もある。ただし、設計者はひとつの物件に専念している訳ではない。ある物件は計画中、またある物件は実施設計中、監理中というふうに進めているので、業務期間だけで作業人・日数を割り出すことはできない。
 では、1棟の住宅に携わる業務人・日数はどのくらいか。小生の事務所(オープンシステム)の平均的な例を参考として示す。
基本設計          23人・日数
実施設計          22人・日数
見積り・施工会社の選定    7人・日数
監理・工程の調整      50人・日数
合計            102人・日数

※資料2 業務報酬料の算定 参照

Q:CMによる完全分離発注の報酬の決め方と金額は?
@業務人・日数を想定、A工事費に連動、B床面積に連動、という方法が主。目標価格、あるいは見積り参加業者の平均金額に対して、決定金額の差額に連動させる方法も考えられるが、小生たちのグループでは行っていない。経験の浅い事務所は、業務に必要な人・日数算定の根拠が乏しいため、先例のデータを参考にしている。
 @は国土交通省告示を参考に、分離発注による業務を加算している。書類1は1例である。
 Aは工事金額合計の15%〜25%が多いようだ。工事金額に連動させる方法は、CMrの努力によって工事金額が下がるほど、自らの報酬額を下げる結果になるというジレンマがある。
 Bは経験を積んだ事務所が自社のデータを分析し、独自に算定式をつくっている。床面積に連動することに違いはないが、正比例はしない。20uの建物は200uの建物の10分の1ではできない。参考までに、小生の事務所の算定式を紹介する。業務報酬料=(150万円+床面積×2万2千円)×係数。係数は一般的な住宅は1.0で、数奇屋建築など特殊なものは1.2などと大きくなる。

Q:設計者がCMrを兼任するのは問題があるのでは?
 CMは何のためか。建築主の限られた予算を有効に活かすため。依頼者あってのCM業務である。
業務分担を細分化することはいくらでもできる。設計者、積算者、現場管理者、さらに全体を統括するCMr。それぞれの業務はお互いにラップしあっており、建物の規模や内容によっては、逆に多くのロスを生む場合がある。
大規模建築の場合に業務を細分化するのは有効な方法である。効率アップとチェック機能が活かされるだろう。しかし、大規模建築であっても、究極の理想をいうなら、ひとりの設計者がすべてを把握して業務を行うことに尽きる。ただ、現実は、そのような超人は存在せず、業務を分担せざるを得ない。
住宅は、ひとりの設計者がすべての業務を把握できる規模である。ひとりで行う方が断然効率が良く、伝達ミスも防げる。
大事なことは、形式ではなく、実際の効果である。設計者がCMrを兼任しても、建築主の代理人という立場で業務を行うなら、何ら問題は無い。

Q:工務店がCMによる分離発注を行うことは考えられるか?
 形式論なら当然考えられる。実行する能力も備わっているだろう。但し、実態が伴うかは別問題である。
 現状の工務店機能を維持したまま、CM業務を行ったとする。一方では設計・施工一括請負、一方ではCMによる分離発注を行う。一括請負の場合は、実行予算に自社の利益や経費を上乗せして、建築主に見積書を提出する。CMの場合は、実行予算そのものも、さらに、複数の専門工事会社から集めた見積書も、すべて建築主に公開して、専門工事会社を選定する。
ある場面では、会社の利益を最大に求め、ある場面では、建築主の利益を最大に求める。果して、同じ会社にあって、このようなことが成り立つであろうか。

Q:建築主支給材で気をつけることは?
 建築主支給とはいえ、見積り、発注、現場での受け取り、確認など、業務は設計者が代行して行う。建築主は代金決済を行うだけである。
 専門工事会社が材工共で請負う場合は、数量の責任は専門工事会社が負う。屋根材、壁材、内装材といった建材を建築主支給で行う場合は、施工をする専門工事会社と十分な数量確認が欠かせない。施工時の材料割付によって、過不足が発生するからで、時には割り付け図を描いて積算する必要も生じる。
 システムキッチンや、ユニットバスならいざ知らず、仕上げ材の場合は、少しの過不足もなく発注することは不可能である。材料が1枚不足しても、作業は中断され少なからず影響が出る。したがって、いくらか安全側の数量で発注する。
 
Q:現場での各工事者の責任範囲は? 周知させる方法は?
 各専門工事会社の責任範囲は、見積り段階で徹底させる。設計図面で分からないところは、仕様書、見積り要綱書による。更に不明なところは、質疑、応答による。
 見積りが重複しないように、また、落ちがないように纏め上げるのが設計者の手腕である。自信が無いうちは、専門工事会社と十分時間をかけてチェックすることである。
 見積りから抜け落ちやすい項目は、ゴミの処理、工事中の水道・光熱費、給水負担金など。事前に金額をはじき難い項目でもあるので、予定価格を計上し、後に実費精算という方法が多い。

Q:施工中の不具合補修はどこの負担で行う?
 施工そのものが不良であれば、施工した工事会社の責任で直す。設計に不具合があれば、設計者の責任で直す。適切な養生をしたにもかかわらず、後で傷が見つかったときは、建築主の負担で補修するのが原則である。
 前の質問にも重複するが、施工中の不具合を防ぐには、見積り期間中にどれだけ検討を重ねたかにかかっている。

Q:メンテナンスはどこの負担で行う?
 完成後に不具合が生じた場合は、設計者とその部分を施工した会社が負担する。施工会社には瑕疵補償の責任がある。瑕疵補償の範囲外は建築主の負担で直す。いずれも窓口は設計事務所となり、設計事務所が関係業者と連絡をとりながら対応する。
 これも前質問と重複するが、雨漏り等、大きなリスクが常に潜んでいるのが建築である。補償会社、保険会社と提携する等のリスク回避は考えておかなければならない。

Q:工事中の予算オーバーへの対処方法は? 防ぐには?
 これも既に答えたことであるが、工事中に予算オーバーすることはまず考えられない。何故なら、工事着工前にすべての予算が出揃って、専門工事会社との契約も済ませているからである。
 仮に、一部見込み金額を残したまま着工する場合は、建築主に事前に説明し、了解を得る必要がある。あくまでも予定価格であること。場合によってはオーバーする可能性のあること。その説明無しに見切り発車した場合は、設計者の責任で対処しなければならない。

Q:公庫、金融機関の手続きは誰がする? 中間検査は誰が立ち会う?
 所得証明書、資産証明書などの用意は建築主が行う。金融機関の融資に関する申請書も原則は建築主が書き、自ら申請する。ただし、用途地域、構造等、建築の専門的な部分の記入は、設計者がアドバイスする。
それ以外の大部分は設計者が代行して行う。中間検査は当然ながら、設計者でなければ立ち会うことはできない。
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