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プレジデント 2000.10.30号(P.119・121)
プレジデント社 編集部:03-3237-3737 販売部:03-3237-3731
プレジデント社から発行されている、「プレジデント」2000.10.30号でオープンネット(株)が取り上げられました。掲載されたのは、『死中に活!「頑張る中小建設業者」の教訓』のコーナーで、建設の新たな動きをみせる3社が紹介されています。(P.114〜121)
掲載記事内容
(オープンネット紹介ページ:P.119・121)
業界の常識を覆す健全な家造りとは
既存の業界体質に風穴を開けようという動きは、ゼネコン以外のところからも始まっている。
鳥取県米子市に本社を構えるオープンネット動きは斬新だ。オープンネットは建設会社ではない。敢えていうなら建築家のネットワークである。ゼネコンや工務店抜きで、しかも元請け→下請けといった重層構造なしで家を造ろうと考える設計事務所の集まりである(これをオープンシステムと呼ぶ)。
オープンシステムについて簡単に説明すると、建築主は設計事務所と設計監理の業務委託契約を結ぶ。これは物件によって300万円とか500万円という定額の契約になる。ここで設計図ができると実際の工事に入るわけだが、このとき住宅建築に必要な専門工事会社(基礎工事、大工、外装、内装など一般的な住宅で20社ほど)とは、個別に工事請負契約を結ぶことになる。専門工事会社の選定は競争入札により提供された見積書はすべて建築主に公開される。こうして建築にかかわる会社はすべてが建築主と直接契約することになり、元請け→下請けという関係はなくなるというわけだ。
オープンネット社長の山中省吾(47歳)は、米子市内で山中設計という設計事務所を開いており、オープンネットの事務所は山中設計にデスク1つ分、居候のかたちをとっている。
「日本の建設業界には無駄がすごく多いんです。家を造るのに必要なのは設計図と職人ですよね。これだけあれば家はできるんです。じゃあ元請けであるゼネコンや工務店、ハウスメーカーは何をしているのか。必要ないのだったらどいてもらおう、ということです。これは別に新しい方法でも何でもない。外国では常識ですし、このやり方が健全なんじゃないかと思います。実は日本でもこっそりと、やっていたんです。でも、もうこっそりやっていなくてもいいんじゃないかと、表に出てきただけなんです」
そう考えていた建築家は多いと思いますよ、と山中は言うが、それにしてもゼネコン、工務店なんかいらない、というのは刺激的である。
「思い切って、もうゼネコンの仕事は手伝えないって宣言してしまったんです」と、山中は言うが、人口14万人弱の町で、こうした大胆な言動が波風を立てぬものなのか、オープンネットへの風当たりは強くないものなのか、という気持ちにもなる。
「ゼネコンの仕事をしないんだから風当たりも何も、風自体が吹かないんですよ。ただ、専門工事会社への圧力は少しあったようです。彼らはうちの仕事もすれば、ゼネコンの仕事もするわけですから。でもまあ、そんなことで文句を言ってくるような会社は碌なところじゃない。工事会社にしても関係を切るいい口実になったようです。で、ゼネコンの仕事はしないと宣言したら、ほかの設計事務所が俺も俺もと手を挙げて、じゃあ情報交換の場をということでつくったのがオープンネットなんです」
当初5社で始まったオープンネットだが、2年あまりで会員は全国に100社を超えた。入会の際には審査があるが、審査基準は主に意欲と人柄だという。
「このシステムにしたからといって、仕事が取れるとは限らない。それでもやりたいですかということですね。実際にそれまでより仕事が減ったという例もあります」
オープンシステムのメリットは、まず建築価格が抑えられることにある。豪華なモデルハウスの建築費や維持費、元請け会社の取り分がなくなり、また建材のメーカーからの直接仕入れでローコスト化が図られるためだ。もちろんつねにゼネコン経由より安くなるわけではないが、少なくとも建築主は何にいくらかかったのかを知ることはできる。
「ただ、それよりも我々としては建築主の思いが建物に反映されることが重要だと思っています。お客さんと、造る人間との距離が近いですから、それだけでき上がったものにも満足してもらえると思っているんです」
もっともっと会員を増やしたい、増えればそれだけ威力を発揮するだろうから、と山中は言う。と同時にオープンネットのやり方が建築の主流になるとは思わない、とも言う。主流は今までどおりの方法になるだろうというのだ。
確かに、オープンシステムがすべての面で従来の方法より優れているわけではない。工事会社と個別の契約を結び、支払いもすべての会社に対して現金で行うオープンシステムは、建築主には負担が大きい(支払いが安定するため、これは工事会社側にとっては大きなメリットである)。従来の方法では設計図面までは無料でもらえるから、設計が気に入らなければ会社を替えればいいが、オープンシステムでは設計図が出てくるのは設計事務所との契約のあとだ。設計の段階で、どうしても建築家と意見が合わない場合はどうすればいいのか。また、工事会社との直接契約が将来不利に作用してしまうことはないのか。建築主はそうしたリスクをすべて背負わなければならない。
しかし、どちらの方法がいいかは別にして、客の選択肢が増えたこと、特にどこにいるのかわからなかった建築家たちが、表に出てくるようになったのは意義がある。今まで設計事務所に頼むという方法があることは知っていても、実際の設計事務所を知らない。知り合いでもない限り、敷居が高くて近づけないという人がほとんどだっただろう。我々はようやく建築家の顔を見ることができるようになったわけだ。こちらから建築家の顔が見えるようになったということは、建築家の側からも客の顔が見えるようになったということだろう。同じことは一部のゼネコンについてもいえそうだ。
山梨の一建設会社から、北海道の一ゼネコンからあるいは鳥取の一設計事務所から発信された、内部から体質を変えようという試みは、今はまだ業界にほとんど影響を与えてはいないにせよ、いずれは堤防をも壊すことになる風穴になるかもしれない。
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