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日経ホームビルダー 2000.4月号(P.20・21)
日経BP社 読者サービスセンター:03-5696-1111 記事案内窓口:03-3869-8000
住宅建設技術者向けの情報誌「日経ホームビルダー」4月号で、オープンシステムの取組みがニュース追跡という形で紹介されました。
地場の工務店支援という色合いが濃い情報誌ですので、全体的に控えめな印象を否めない内容です。
しかし、こういった立場の情報誌でも無視しきれない、これまでのオープンシステムの取組みといったものが、確実に市民権を獲得しつつあるのだなという印象を与えてくれるものでした。
また、本誌は結びにこうも書いています。『オープンシステムは着実に実績を重ねている。そこには、現在の発注方式に不信感を持っている施主の存在がある。住宅会社は、オープンシステムを敵対視するのではなく、むしろ、それを支持する施主のニーズに目を向けるべきだろう。「コストの透明化」、「施主の住宅建設への参加」など、新たな顧客ニーズに対応していかなければ、施主にそっぽを向かれる時代が訪れている。』(P20〜P21)
是非、ご一読ください。
掲載記事内容
元請け抜きで住宅建設「透明性」が顧客の支持得る
1992年、鳥取県米子市の設計者、山中省吾さんは、施主が専門工事会社に直接発注する「オープンシステム」を始めた。その後、設計事務所を会員とするネットワークも発足、すでに150棟を建設して、市場に浸透しつつある。
「住宅会社の建てたモデルハウスや実際に建てられた家を見たり、話を聞いても、なぜか任せられないような気がしていました。それは何もかもが不透明だからです。」オープンシステムを希望した施主の言葉だ。
山中省吾さんが始めたオープンシステムには、元請けとなる住宅会社がない。できるだけ住宅建設のプロセスを透明にしたいからだ。専門工事会社の選定は山中さんが代表を務める山中設計のアドバイスを受けながら、基本的には施主が行う。複数の専門工事会社から見積書を提出してもらい、それを施主と山中設計がチェックして業者を選定する。住宅建設の価格を施主が発注原価の合計として把握できる仕組みだ。
オープンシステムに賛同する設計事務所も徐々に増え始めた。98年には、オープンシステムを実践する設計事務所を会員として、ネットワーク「オープンネット」を設立した。各社のノウハウや情報を共有化するためだ。現在、北は秋田から南は宮崎まで、60社にまで拡大している。
施主の認知度を高めるために、オープンネットはホームページ(http://www.open-net.co.jp)も立ち上げた。ネットに参加する設計事務所の紹介やオープンシステムの仕組みの解説のほか、ドキュメント風に実例の進行状況を公開しているコーナーもある。去年10月にリニューアルしたが、3ヶ月間で20人の施主からオープンネットに問い合せがあった。
ホームページでは会員同士が情報を交換し、実際の発注単価の収集も始めている。設計者は自分で工事を発注した経験がほとんどない。単価情報を見積書の中チェックや価格交渉に役立てる予定だ。
ネットワークを立ち上げたことで、施主の不安を解消する仕組みを整えることができた。トラブルやクレームが発生すると施主は設計事務所に相談を持ち込むことになる。ただ、不具合の原因が屋根にあるのか、躯体にあるのか、はっきりしない場合も考えられる。普通の住宅なら元請けに責任を1本化できる。オープンシステムでは契約が複数にわたるので、責任の所在がはっきりせず本当に修繕してもらえるのか、不安になる施主もいるだろう。
さらに、今年4月に施工される住宅品質確保促進法で、すべての住宅に10年間の瑕疵担保責任が義務付けられる。オープンシステムではそれぞれの専門工事会社がその責任を負うが、その一方で、工事会社がリスクヘッジのために保険制度を利用したいと考えても、現状では元請けを前提とした住宅会社のための制度がほとんど。住宅保証機構の保険制度にも登録できないのだ。
そこで、自前の保証制度「オープンネット補償共済」を立ち上げた。工事中の火災などのリスクのほか、品確法が瑕疵担保責任の対象としている構造耐力上の主要な部分などについて、10年間にわたって長期保証を行う仕組みだ。
引き渡し後の保証は原則として工事業者の責任だが、専門工事会社が倒産するなどして、瑕疵の修繕工事を進められなくなった場合は共済が修繕費用を施主に支払う。不具合の原因がはっきりしない場合にも、共済が修繕費用を負担するので、施主の不安は解消される。さらに、3年目以降に発生した修繕工事については、工事業者にも一定額が補填される
オープンネットは施工棟数がすでに150棟を超え、確実に市場に浸透しつつある。なぜ、受け入れられたのか。
施主の手間は格段に増える。通常、15〜16社の専門工事会社とそれぞれに契約を交わす。支払いも毎月決まった時期に「出来高払い」で専門工事会社に直接支払う。住宅金融公庫などの金融機関から融資が下りる前に支払いが発生した場合には、つなぎ融資を受けなければならないこともある。
また、設計者に対して、設計・監理に要する費用だけでなく、施工会社の選定、工程の調整に対しても、一定の費用を支払う。
それでも施主に不満はない。住宅建設に積極的に参加できて、自分が用意した資金の使い道もはっきりしているからだ。さらに、元請けの経費がなくなることで、施主の建築費用は通常の住宅建設に比べ2〜3割安くなるという。
オープンシステムに参加する専門工事会社からの評価も高い。元請けから発注金額をたたかれるよりはるかにましだという。「手形がなく、支払いも早い。」と金払いの良さも魅力になっている。
山中さんは「オープンシステムを施主の選択肢の一つとして確立させたい」と語る。そのために、オープンネットの会員を1000社に拡大することが当面の目標だ。ただ、オープンネットに参加することは「元請け離れ」を宣言することになる。実際に、問い合せはしたものの「住宅会社に仕事は要らないと宣言するのは、とても怖くてできない」と入会を断念する設計者もいる。
こうした状況でも山中さんは自信を崩さない。「オープンネットの会員数は昨年まで10数社。それが今年になって60社に拡大した。このまま会員が徐々に増え続けていけば、ある臨界点を超えて一気に拡大するだろう」と語る。
オープンシステムは着実に実績を重ねている。そこには、現在の発注方式に不信感を持っている施主の存在がある。住宅会社は、オープンシステムを敵対視するのではなく、むしろ、それを支持する施主のニーズに目を向けるべきだろう。
「コストの透明化」、「施主の住宅建設への参加」など、新たな顧客ニーズに対応していかなければ、施主にそっぽを向かれる時代が訪れている。
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