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Q19 オープンシステムにおいて、万一の場合の補償はどうなっていますか?
 


オープンシステムにおいて、万一の場合の補償はどうなっていますか?

 補償の説明をする前に「欠陥と瑕疵」について説明し、その後で「保証と補償」について述べます。
欠陥と瑕疵
 2001年4月に「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(品確法)が施行された。優良な住宅が供給される住宅市場を形成する施策として成立したこの法律は、三本の柱から成り立っている。第一は住宅の性能表示、第二は瑕疵担保責任そして第三は住宅に関する紛争処理。この法律の成立過程で、秋田県などが出資した第三セクターによる欠陥住宅が社会問題化し、マスコミがこの法案を取り上げたために、欠陥住宅対策法案として注目を集めた。従って、この法律の性格や内容について必ずしも正しく理解されているとは言い難い。
 例えば一般に「性能表示・保証制度」というが、性能表示は、耐震性、耐久性、耐火性、維持管理、遮音性、採光性、省エネ性、室内空気環境、バリアフリーなどの性能を評価書にまとめるというものだが、この性能が長期間維持されることを保証するというものではない。また評価も、設計図書を審査する「設計住宅性能評価」と、工事中に検査を実施して評価する「建設住宅性能評価」の二種類があり、発注者の希望でそれぞれ性能評価機関に手数料を払って申請する。性能表示は、必ずしなければならないという義務ではない。
 一方、保証制度は基礎や柱、梁、床、壁、屋根などの構造耐力的に主要な部分や雨水の浸入を防ぐ部分に対する瑕疵担保責任を10年とするものだ。瑕疵とは欠陥を意味する法律用語で、瑕疵担保責任とは瑕疵が発見されたとき、請負者が発注者の要求に応じて瑕疵を修補しなければならない責任のことをいう。この瑕疵担保責任は品確法では構造耐力上主要な部分等について10年と規定しているので、この期間内に発見された瑕疵に対して請負人は修補する義務を負うことになるが、実はこの瑕疵という用語がくせ者。まず、手直しで十分な軽微な瑕疵まで欠陥というかどうか。「己量の存するところを忘れ、先人の瑕疵を謂う」という、中国の古典である韓愈を語源としている通り玉にキズ、誰にでもある欠点といった程度の意味だ。従ってキズは治せばよいという発想から、民法では瑕疵に修補義務はつけても、暇痕を契約解除の原因とするところまで認めていない。
 つまり、現行の制度では欠陥を瑕疵としてとらえているため、欠陥住宅に対する消費者保護という点からは十分とは言えないという意見がある。瑕疵はすなわち欠陥として考えてよいものかというのである。確かに、意図的な手抜き工事は契約上の不法行為であるにもかかわらず瑕疵となるために契約解除できないという逆効果を招いている。
 民法が発布された今から100ほど前の大工・棟梁の時代に、大した年キズでもないのに過大な負担を請負人に掛けるべきではないという瑕疵の考えを、故意の手抜きと同列にするのは自縄自縛だ。誠実に工事を遂行し、最大限の注意を払って管理してなお見えないところに存在しているかもしれないキズを瑕疵と考え、欠陥とは所定の基準を満たしていない状態をいうべきである。設計図や仕様書などの通りに作られていない、建築基準法などの法令に準拠していない、標準的な技術基準を満たしていないなどだ。性能表示の性能も、あらかじめ要求した性能が満たされていなければ欠陥ということになるほうが合理的ではなかろうか。
 瑕疵のもう一つの問題は、瑕疵そのものの存在を証明することはかなり難しいということだ。法律では「隠れたる瑕疵」というように、普段見つからないところに存在するキズをいう。家が傾くのは現象だ。訴訟する場合、家が傾いた原因として瑕疵の存在を立証しなければならないのは住宅の所有者の側。それでは負担が大きいので、一定の現象が起これば瑕疵があるであろうと推定する方法もあるが、その基準に達するまでは瑕疵がないと判断される恐れもあり、品確法では法廷外で迅速かつ適正に紛争を処理する機関を設けることになった。
保証と補償
 請負人はその仕事の目的物に瑕疵があれば修補する義務がある。品確法は新築住宅でかつ構造耐力上主要な部分や雨水の浸入する部分を対象としているが、一般には工事を請け負えばすべてが対象になる。ただし、瑕疵を修補する義務を負わなければならない部位や期間は契約によるなどしてまちまちだ。瑕疵の修補とは、瑕疵がない状態にすること。瑕疵担保は建物が完成して引き渡した後の請負者の責任だ。
 請負者は発注者と請負契約を結ぶが、その契約を全うする義務を負う。履行責任だ。契約を履行しなければ損害賠償を請求され契約を解除される。つまり請負人には建物を完成して引き渡す義務と、引渡後の品質に異状があればこれを直す義務がある。さらにこれらの義務をちゃんと果たすことができるということを発注者に対して約束することが保証。口約束では保証にならない。保証が約束される裏付けがなければならない。
 オープンシステムでは補償システムをその裏付けとしている。つまり、分割発注をするオープンシステムでは、それぞれの専門工事業者が請負人だ。彼らは請負人としての義務を負い、その義務を果たす約束(つまり保証)がなければ発注者であるお客様は安心できない。工事を請け負う専門工事業者たちのお客様に対する保証の裏付けとなるのがオープンシステムの補償システム、「オープンシステム建物登録制度」だ。
 表現を変えると、この補償システムが専門工事業者を補償することで請負人としての義務を果たすことができるというもの。対象は、工事中に生じる事故や災害などのリスクに対応する際に発生した費用の補償と、完成引渡後に瑕疵が原因で生じた事故を修補した工事費用に対する補償。これらの補償を実行するために大手損害保険会社と再補償契約を結んでいるほか、既存の保険規定では対象にならない事故にも対応できるように自家共済を積み立てている。会員設計事務所は小規模でがんばっているところが多いが、芯になって活躍している建築家に事故があって業務遂行の途中で業務ができなくなってしまうことがないとはいえない。オープンシステムはネットワークなので緊急時にスクラムを組んで非常事態を乗り切ることはできる。しかし、このようなケースでは費用の増加は避けられない。このようなお客様に予定外の負担は掛けないという時に自家共済で対応する。
 品確法の施行で補償による保証制度を専門とする企業も増えたが、いずれもハウスメーカーや工務店が対象になっていて、オープンシステムのような専門工事業による分割工事には対応していない。いずれ下請けに甘んじてきた専門工事業者が元請専門工事業としてレベルアップすれば、そのような保証制度の恩恵にあずかることができる日が来るかもしれないが、まだまだ先。オープンシステムの補償システムはそれまで頑張らなければならないし、専門工事業に対する補償の内容もますます充実させてゆく努力を怠ることはできない。専門工事業に対する補償の充実は、結果としてオープンシステムのお客様の安心と利益につながるものと信じ、たゆまぬ努力を続けるものである。
 (オープンシステムネットワーク会議品質システム室代表 山本一清。)
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