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[club 15] オープンネットはなぜ安い(2)
 

----- Original Message -----
Sent: Friday, August 25, 2000 12:58 PM
Subject: [club 15] オープンネットはなぜ安い(2)


さて、答えの続きを。

> 基本的には工務店が行っていることと同じなのですが、
> なぜ安くなるのでしょうか?やはり競争入札をさせて、
> 価格競争をさせるところにポイントがあるのでしょうか。

情報量が多いということはとても有利です。オープンネット
は全国各地の設計者から瞬時に情報を取ることができます。
例えば、「照明器具の価格について皆さんの事例を教えて
ください」とオープンネットのMLに投稿すると、1〜2日
のうちに7〜8件の事例が集まります。「こちら北海道・・・」
という具合にです。

また、工務店は下請け会や協力会といった、いつも決まった
専門工事会社から見積りをとることが多いようです。どうやって
適正価格(市場価格)を判断しているのでしょうか。
オープンネットでは全国各地の発注明細まで参考として
閲覧することが可能です。

また、会員の設計者の中には、特定の分野において特殊な能力
を持った「スーパーマン」がいます。そういった能力を活用
することもできます。

例えば照明器具の例でいうと、京都の建築家はイタリアから
直接輸入してしまいます。ガラス製の照明器具の値段を聞いて
驚きました。1台750円。日本の照明器具メーカーもイタリア
から輸入して販売しています。同じようなもので定価17000円
くらいです。先日彼はその方式でシティーホテルを完成させま
した。総工費16億のうち4億くらいの建材、器具を輸入しました。
形としては建築主が直接購入して、建築業者に支給。その代行
をオープンネットの建築家が行ないます。

さらに、オープンネット会員専用のHPで建材や機器の見積り
発注をすることができます。メーカーの直接販売ですから、
価格は当然安くなります。ネットワークの拡大に伴って、
建材メーカーとの提携も拡大しつつあるので、これから大きな
効果が出てくると思います。現在は既存の販売ルートを刺激
しないように、会員だけの秘密のHPで行っています。

> 当社の場合40坪で2000万前後の住宅が多いのですが、
> この程度のクラスの木造住宅でもオープンシステムで
> 行った方が安くなるのでしょうか。

建物の内容が分かりませんので何とも言いようがありませんが、
一般的な工法で、一般的な材料を使っているのであれば、
安くなる可能性は充分あります。

ただ、特殊な工法や材料を使い、仕入ルートを押さえている
場合はオープンシステムでは安くならないかもしれません。

> 工務店でもしっかりと競争入札をさせれば工事原価は
> 同じ程度になると思います。あとは現場管理費が設計
> 事務所の場合、トラックや倉庫や備品などをもってなく、
> 雑多とした仕事をすべて外注に振り分けたとすると、
> 固定費が少ない分安くなるのでしょうか。

価格だけ(直接工事費)なら工務店でも同じ程度になりでしょう。
あとは経費がいくらかかるかです。

> それとも、設計事務所の職員の給与が安く、長時間
> 働く社員が多い傾向にあるので、現場管理費が安く
> なるのかも。でもこれは、是正しなくてはいけない問題です。

それは否めません。

> また、設計契約があり、必ず受注できるというメリットが
> あります。工務店の場合、無料で設計見積もりしますが、
> 他社との競合で無駄になっている場合が大変多いです。
> 無駄な経費を営業に相当つぎ込んでいる。営業マンや
> 広告宣伝費もバカにならない。こういった物の節約で
> コストダウンにもつながるのだろうか。

オープンシステムの業務費用や工務店の無駄な費用に関して、
まとめて説明します。長くなりそうです。
です、ます調をやめて だ、ある調にします。

建築主にはとても気になる業務委託料。オープンシステムの
建築士業務報酬料は、実際に行なった過去の類似物件の業務量を
参考に算定している。製造業や販売業と違って、人件費と事務所を
維持する経費を基準に算定する。

ただし、設計コンセプトや基本計画といった不確定要素の多い部分は、
事前に人件費を割り出すのは難しい。また、このような人件費は物件
によって手間のかかり具合が違うので、一律に決めることはできない。
かといって、手間のかかった分だけあとで請求ということにすると、
建築主は不安でしょうがない。打合せの最中も時間が気になって落ち
付かないだろう。そこで、過去の事例を参考に事前に決めておくこと
になる。

また、オープンシステムの設計事務所は全国一律の業務報酬ではない。
それぞれの事務所の裁量で決めることにしている。何故かといえば、
考え方や手法はある程度共通していても、個々の事務所の能力や得意
分野は当然違うからである。業務に対する手間のかけかたも、事務所
によっていくらか違うだろう。

自分の事務所はデザインにとことんこだわる。どこにも真似のできない
ような斬新なデザインを提供する。だから、手間もかかり、いくらか
報酬が高い。あるいは建築資材をヨーロッパから直輸入する。その分
手間はかかるが、建築主には充分メリットを出すことができる。
だからわが社の報酬はこれだけ必要だ。このようなことは当然あって良い。
 
それでは、報酬額の安い事務所は能力が低いのかというと、そうではない。
その事務所なりの合理化を進めているとも考えられるし、庶民のために
一肌脱いでいるのかもしれない。それが経営方針なのだろう。
いずれにしても、報酬額は個々の事務所の判断で決めることになる。

そうはいっても、設計事務所に会って話しを聞くまで、報酬額は見当が
付かないのでは具合が悪い。ここでは平均的な住宅の平均的な事例を
あげておく。参考にはなると思う。

人件費はそれぞれの項目毎に業務に携わった人・日数で計算する。
1人で3日間なら3人日、2人で3日間なら6人日という具合にはじき出す。
この人日数に1日当たりの単価を掛けたものが直接人件費で、
所員の給料として支払われる。その他に、事務所を維持するために必要な、
家賃、保険料、税金、光熱費、電話代、事務機器やパソコンなどの諸経費、
書籍を購入したり、研修会の参加など技術を維持するための技術料を加えた
合計が、建築士事務所の業務報酬料となる。

それでは、実例を通して話を進める。以下に出てくる人日数、単価、
人件費、諸経費、技術料は、もちろん、それぞれの事務所によって違い
はある。

[業務報酬料の実例]
N氏邸新築工事。この事例は2000年7月に契約した。場所は鳥取県米子市。
施工規模は延べ床面積230uを想定している。つまり、これから計画案を
つくるので正確な面積はこの段階ではつかめない。簡単なヒアリングをし、
過去に行なった事例の図面や模型を参考におおよその規模と予定価格を
設定し、業務報酬料を算定している。ちなみに、この事例の構造は木造、
予定価格は3500万円である。実施設計を終えた段階で、当初想定した
規模といくらかの違いはじるが、1割以内の誤差であれば業務報酬料の
変更は行なわないこととした。

明細は略

業務委託料の支払い方法もそれぞれの事務所の判断に任せている。
この事例の場合は、消費税を含んだ5,250,000円を4回に分けての
支払いとした。初回は業務委託契約を交したとき(業務着手時、2000年7月)
に1,312,500円。2回目は実施設計を完了したとき(2000年11月に予定)
に同額。3回目は工事を着手したとき(2001年1月に予定)に同額。
最終の支払いは工事完了検査が終わったとき(2001年6月)に同額である。
着手時に業務報酬料の1/4をいただくのは、着手してから設計完了までの
期間が長く(この事例では5ヶ月間)かなりの経費を必要とするので、
このようにしている。

さて、この報酬料は高いか、安いか?
人・日数は過去の事例を参照に経験的に割り出した。この事例では
延べ133人・日数となっている。個性と創造性を大切にしたオリジナル
の設計は、実際このくらいの手間がかかる。設計事務所の所員は夜遅
くまで、ときには土日祭日もなく働いて建築主の要望に応えようと
している。(田口さんの指摘は事実です)

次に単価、つまり所員の1日8時間当たりの人件費を考えてみる。
一級建築士で年齢40歳くらいだとどれくらいが相応しいか。能力に
よって違うだろうから一律に決めることはできないが、一応地方公務員
と同じくらいを想定してみる。土日祭日が年間に110日。盆と年末年始
で15日。365日−110日−15日=240日。仮に年収を700万円とすると、
1日当たりの人件費は700万円÷240日=2万9000円となる。この事例は
2万5000円で計算しているので、逆算すると年収は600万円になる。
地方公務員と比べてけっして高い人件費ではない。

諸経費は事務所を維持するための費用である。家賃、光熱費、電話代、
福利厚生費、事務所協会や建築士会などの会費、雑誌や刊行物などの
費用、勉強会や研修会費、税金等々。さらに、ある程度の交際費や
最低限の宣伝広告と営業、それに適正な利益も必要だろう。これら
諸経費は設計事務所の場合、直接人件費の50%〜100%くらいといわれ
ている。事例では50%で計算した。

では、ハウスメーカーや工務店が住宅を受注した際の粗利益はどの
くらいなのだろうか? この事例の建物規模は230u、約70坪。
予定価格は3500万円。この中には建築士の業務報酬料を含んでいる
ので、直接的な工事費(工事原価)は3000万円。

大手ハウスメーカーの荒利益は契約金額の30%〜40%といわれている。
この中には支店経費、本店経費などが含まれる。そうすると、この事例
に当てはめた場合は1050万円〜1400万円が粗利益となる。直接的な工事費
(工事原価)は2100万円〜2450万円である。だからこそ「設計はサービス」
ということが可能となる。

設計はサービスでも、最終的に工事の受注に結び付けば無駄にならない
のであるが、成約率が低いと負担は凄い。ハウスメーカーや工務店の
設計内容は、業務報酬料の事例で示した「基本設計」と同程度と思われる。
そうすると1軒の設計で約80万円。

もし成約しなかったら、次のお客様の工事費で回収しなければならない。
次のお客様もサービスで設計したけれど、また成約しなければ…。
また次もダメだったら…。実際は何件の設計をして、その内何件が
成約しているのだろうか。5件に1件でも凄いことだよ。私の知人
(地元の住宅会社)は10件提出して成約は1件といっていたが…。
だからたくさん粗利益を取ってもけっして利益は出ないはずだ。

ちなみに、田口さんのところの成約率は何%ですか。
差し支えなければ教えてください。企業秘密なら無理にとは
言いません。

地方の工務店の粗利益は契約金額の20%〜30%といわれている。

(これも田口さんに聞きたいところです。差し支えなければ公表
 してください。)

そうすると、同じようにこの事例に当てはめた粗利益は、
700万円〜1050万円となる。直接的な工事費(工事原価)は
2450万円〜2800万円である。

総工事費から経費や利益を引いた金額を、直接工事費、
又は工事原価という。この場合の経費は、直接建物の工事に使われない、
宣伝広告費、営業費用、モデルハウス維持費などのことを指す。
そうそう、成約しなかった設計費用も。

建築主が総額3500万円で契約した場合、実際いくらの金額が直接工事費
に回されるのか。上記の例だと、大手ハウスメーカーで2100万円〜2450万円、
地方の工務店で2450万円〜2800万円、オープンシステムの事例では3000万円
である。直接工事費に使える金額が大きいほど、建物の質は向上すると
考えるのが自然だ。

オープンシステムは建築主のために、オリジナルな設計を行なう。
そして、工務店やハウスメーカーには退いてもらうので、その仕事も
補完する。現場における検査や監理、工程の調整、建築主や職人たち
との打合せの量は、工務店やハウスメーカーの比ではない。全体の業務量
は圧倒的に多い。(ただし、営業や宣伝に関する業務量は圧倒的に少ない。)
それにもかかわらず、業務委託費用は決して高くない。それは、宣伝、
広告、営業、モデルハウスなどにほとんど費用を使っていないからである。
 
それと、建築の設計はサービスで、という日本独特の慣習の中に、
正攻法で挑んだ先覚者(建築家)の闘いがあって、やっとここまで
社会的に認められ、この報酬が理解されるようになった。しかし、
この報酬とて公務員よりは少ない。オープンシステムの建築家は土日祭日、
昼夜を分かたず奮闘し、カバーしているのが現状である。

建築家が本来の仕事に目覚めたから、社会的な意義を感じているから、
そのような価値観の建築家が行なっているからといっても、私たちは
ボランテフィアで仕事をしているのではない。設計事務所という
一国一城を構えた主であり、所員を養っていかなければならない。
女房もいれば子供もいる。事例で示した報酬が適正とは思っていない。
こういう考え方を日本の社会に定着させ、次の世代に引き継ぐための
過渡期だから、やむを得ないと思っているだけだ。
 
自分(建築主)のためだけに、設計事務所を使う。オリジナルで個性的
な家ができる。贅沢な話しである。本来は高くてあたりまえ。それが、
オープンシステムでは、中間に位置する業者に退いてもらうので、
かなりのコストダウン効果が現れる。それは建築士の業務報酬量をも
大きく上回る。建築士に業務報酬を支払っても、それを上回るコスト
ダウン効果があるならば、建築主はオープンシステムの建築士に仕事
をしてもらった上に、大きな配当金まで手にしたことになると私は
思うのだが・・・。

書いているうちに感情が高ぶってきて、手前味噌になったところは
大目にみてください。

質問に対して、完結に答えようと思うのですが、オープンシステムは
新しいビジネスモデルなので、ついついこまかいところに誤解が
ないようにと思って、くどくなってしまいます。

皆さんにはずいぶん迷惑でしょう。これから気を付けます。

では・・・この辺で・・・。

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